生徒が主役となったグループワークなど
日本でも類を見ない、独特な歴史を持つ長崎は、出島で世界との交流を行った江戸時代の鎖国期から、幕末を経て産業革命を迎える明治時代、被爆と復興の歴史の昭和まで、幅広い時代の歴史を学べる。市内中心地には和華蘭文化と呼ばれる中国や西洋、そして往時をしのばせる日本の雰囲気が楽しめるエリアが点在し、長崎港を中心にしたすり鉢型の地形のため、斜面地の生活や独特な夜景も楽しめる。
これまで長崎には主に「平和学習」を目的として数多くの修学旅行生が訪れてきた。長崎にとって旅行マーケットの中でも修学旅行は非常に重要なマーケットだ。これをさらに強化するため、従来の「長崎=平和学習」から「長崎=探究学習」というイメージへと大きく転換を図ろうとしている。独特な歴史と多様な文化の影響を受けた長崎には、学校教育におけるキーワード「探究学習」の素材も豊富に存在するからだ。
長崎では将来の担い手である若い世代に対して平和の推進を訴求するための探究学習プログラムを用意している。
その一つが、「長崎SDGs平和ワークショップ」。長崎での現地学習で見て、聞いて、グループワークで考えて、話をして、意見を書いて、まとめて発表するという、生徒が主役の学習プログラムだ。長崎での平和推進活動の現状と課題を知り、SDGsの視点で自分たちなら平和推進のために何に取り組むか、その中で個人としてどのような活動をするかという視点でグループワークに取り組んでもらう。現地で見聞きした後に行うため、インプットした情報をアウトプットできる点において非常に学習効果が高いと考える。
GIGAスクール構想に対応し、デジタル技術を活用した学習プログラムが「長崎平和ARアプリ」。同アプリには長崎での現地訪問の事前学習向けの17コンテンツと、現地学習向けの14コンテンツの計31コンテンツが入っている。現地学習コンテンツでは目の前の景色の被爆当時の姿を見ることができる機能もあり、従来の平和学習にはないプラスαの情報を提供し、学習効果の向上につなげることができる。ガイドとともに被爆遺構をめぐる「ながさき平和・歴史ガイド」が多客期に提供できない際、それに代わるプログラムとしてこのアプリを提案している。
「訪問取材」は、生徒が事前に探究学習のテーマを決め、長崎滞在中に取材を行い、そのテーマについて学ぶという交流型の学習プログラム。事前学習では、長崎の歴史や産業、食文化などがなぜ生まれたのかについて自ら考える。そして、その答えを生徒たちは現地で関係団体や個人に直接会って話をすることで理解を深めていく。
受け入れ窓口となる長崎国際観光コンベンション協会では、「平和学習については、SDGsや探究学習、対話的で主体的な深い学び、GIGAスクール構想などさまざまなニーズに合った学習プログラムを用意している。事前学習や事後学習にも対応しているため、長崎の修学旅行では高い学習効果を得られる」とアピールしている。
31の学習コンテンツが入った長崎平和ARアプリ
ガイドとともに被ばく遺構をめぐる「ながさき平和・歴史ガイド」
長崎SDGs平和ワークショップでのグループワーク