館内のお食事処で頭を悩ましているというお声をいただくことがあり、今回はお食事処について考えてみたい。悩みの種となっている最大の要因は、団体旅行から個人旅行への転換により、求められるお食事処のスタイルが変わってきた点が挙げられる。かつて団体旅行隆盛の頃は、宴会が主流だったため、宴会場がお食事処としての役割を果たしていた。それが個人旅行の方が増加した今の時代になると、自然と宴会場を個人用に流用せざるを得なくなり、その対応の中で、さまざまな不都合が生じているケースが多い。
まず、プライベート空間の確保が課題であることが多い。畳敷きにお膳あるいはイステーブルセットのため、多少は席を離したとしても、そもそも同一空間のため、隣の席が気になるなどの居心地の悪さを覚えるお客さまが多い。ましてや繁忙期にはお客さまがごったがえし、ゆっくりと食事もできなかったとクレームになるケースもある。対応策としては衝立(ついたて)が有効である。個室空間に比べれば劣るものの、目線の高さくらいの衝立があれば、一定のプライベート感は保たれるので隣の席が気になるという状態は防げる。
続いて、席数不足の課題もある。団体宴会であれば、同一空間、同一時間に詰め込みで収容できたものの、個人のお客さま主体となると、スペースを確保したり食事時間がバラバラだったりと同数のお客さまを収容することが難しくなる。解決方法としては、ちまたのレストランのように回転させたりテーブルアサインのコントロールを綿密にしたりすることが求められる。
これらの課題解決のために、思い切ってダイニングレストランなどに改装している施設も増えているが、費用がかかるものなので、すぐに難しければ、知恵を出して工夫することが必要となるであろう。
そして、お食事処の情報がHPやプランの説明に記載されていないケースもある。すると、お客さまは不安になるので、お問い合わせをすることで、電話が増えるということになりうる。あるいは、お問い合わせをいただければ良い方で、しっかりとしたお食事処を持ち、情報を発信している施設に予約が流れるという現象も起きかねない。それほどに今の個人旅行のお客さまは「食事をする場所」も重要視されているのだ。
団体華やかりし頃のことはいったん忘れて、今の個人旅行のお客さまがお食事処で楽しむには何ができるのかという点を改めて考えてみてほしい。
(アビリティコンサルタント・プライムコンセプト取締役 内藤英賢)