【2019年 焦点】人手不足 観光経済新聞 記者 向野悟


外国人材と生産性 人への投資が急務

 
 日本の人口構造は少子高齢化に伴い生産年齢人口の減少が進む。産業界では人材、人手の確保が大きな課題となっている。

 人手不足の対策の一つとして政府は外国人材の就労拡大にかじを切った。新たな在留資格の創設を盛り込んだ改正出入国管理法が成立し、2019年4月以降、新制度での外国人材の受け入れが始まる。

 新たな在留資格「特定技能」の受け入れ業種には、人手不足が深刻な分野として宿泊業を含む14業種を予定。宿泊業界では、旅館・ホテル業4団体が連携して16年10月に「宿泊業外国人労働者雇用促進協議会」を立ち上げ、外国人材の活用を模索しているところだった。

 政府は、新制度の検討の初期段階から受け入れ業種の一つに宿泊業を挙げていた。宿泊業に着目した理由の一つには、インバウンドを中心とした観光を経済成長や地方創生の柱に据える中、「人手不足でシフトを組めず、部屋が空いていても客を受けられない」といった状況への危惧があったとみられる。

 ただ、受け入れ人数の上限設定などを含めて新制度による外国人材の活用が、すべての人手不足問題を解決するわけではない。人手不足に関して宿泊業が抱える本質的な課題には、国内人材の確保や生産性向上があり、取り組みの強化が不可欠だ。

 日本生産性本部・サービス産業生産性協議会の生産性向上戦略PTは、18年11月に提言を公表した。生産年齢人口の減少で労働力獲得が常に困難になる局面を「労働力喪失時代」と位置付け、「マクロの経済規模の拡大を目指す『成長戦略』から、労働者1人当たりの付加価値の抜本的な増大に焦点を当てる『生産性向上戦略』に転換することが必要」と提言している。

 提言では具体的に、企業の新陳代謝を促す産業政策への転換、ITやサービス工学によるイノベーションの促進、人口減少に伴う消費減退に対し生産性向上に見合った労働分配率の向上による購買力強化など、社会経済全体の変革を訴えている。

 労働力の希少性が増す中、産業界には外国人材を活用しつつも、従来以上に生産性向上を推進し、人材への投資を強化する取り組みが必要だ。

【向野悟】

 
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