目指すべきは旅行需要全体の拡大
コロナ禍による移動制限を受けて縮小した国内旅行需要が戻りつつあり、大手旅行会社の業績も改善してきている。協定旅館ホテル連盟の組織を抱える大手3社の中間決算状況でもそれが見て取れる。
事業年度が1~12月の日本旅行から見ると、2022年度の中間決算(1~6月)は、子会社を含めた連結で営業利益が前年の21億7600万円の赤字から32億2500万円の黒字に転換した。純利益でも前年の6億円の赤字から28億7500万円の黒字となった。
JTBグループの22年度の中間決算(4~9月)は、営業利益が前年の330億7900万円の赤字から46億5800万円の赤字に。純利益は67億3300万円の黒字から28億9400万円の赤字となった。記者発表会でJTBは営業利益が前年度よりも284億2100万円改善したことを強調し、業績回復をアピールした。通期では営業損益で前年度比112億円増となる63億円の黒字、最終利益でも「黒字を見込んでいる」(山北栄二郎社長)。
KNT―CTホールディングス(HD)の22年度中間決算(4~9月)は、営業利益が前年の84億8300万円の赤字から20億2500万円の黒字に転換した。純利益は、前年同期から94億1700万円改善し25億6400万円となり、3期ぶりの黒字となった。通期連結業績でも黒字となる見通し。
各社とも業績改善の理由として、国内旅行と、企業、行政からのBPO事業の取り扱い拡大を挙げている。JTBは、BPOサービスやMICEの取り扱いが20年度の52億円から378億円まで伸びた。KNT―CTHDも、18年度の10倍となる400億円強になった。
コロナ禍前から旅行会社はOTAに押され転換期を迎えている。本格的な回復と今後の飛躍に向けて本業の旅行業において、ここ数年の「ツーリズムEXPOジャパン」でテーマになっている「新しい旅のカタチの提案」が重要になる。22年大会では「サスティナブル」に焦点を当てたカンファレンスやセミナーなども多かったが、SDGsなどは今後、旅行に備わっていないといけない必要条件になるだろうが、学習・研修旅行を除いて旅する目的には成りにくい。
旅行業界が目指すべきは旅行需要全体の拡大ではないか。国内旅行では、「連泊を促進する」新しい旅のカタチ、「地域を周遊する」新しい旅のカタチなどの創造を期待したい。