【2025年観光業界のキーワード】「人手不足」 記者・内井高弘


 2024年の観光業界はインバウンドを中心に活発な動きを見せた。不安要素は挙げればきりがないが、「巳年(へびどし)」は脱皮をするヘビのイメージから、復活と再生を意味し、「巳」を「実」にかけて、実を結ぶ年ともいわれるようだ。四つのキーワード(宿泊税、人手不足、大阪・関西万博、観光立国)を取り上げ、独断と偏見で見通した。

労働環境に新たな動きも

 慢性的な人手不足状態にある宿泊業界。旅行需要の回復で宿泊客も増加傾向にあり、受け入れに不安を持つ施設も少なくない。解消の有効な手はなかなか見つからず、25年も頭を悩ましそうだ。

 しかし、帝国データバンクが昨年10月行った企業の動向調査によると、人手不足と感じている企業の割合は、旅館・ホテルの正社員で62.9%、非正社員で60.9%となり、前年同月からいずれも低下した。改善傾向にあると判断するのは早計か。

 同社は「業務効率化に向けたツールやスポットワークなど多様な働き方の普及が、人手不足の解消に寄与している背景の一つとして考えられる」としている。

 「スポットワーク」は近年、急速に普及している働き方で、「スキマバイト」ともいわれる。ピンポイントで働き手を確保したい企業と、隙間時間に稼ぎたい働き手がアプリでマッチングできるようになり、新しい働き方として注目を浴びている。

 スポットワーク仲介業はタイミーやシェアフルなどがあるが、有望市場と捉える向きもあり、参入企業も増えそうだ。

 働き手の確保のしやすさや、採用や労務管理にかかる費用もそうかからないとあって、魅力を感じる雇い主も多いと聞く。スポットワークが定着していくのかどうか、目を離せない。

 一方で、もっと身近なところに目を向けてはどうか、という指摘もある。

 リクルートジョブズリサーチセンター長の宇佐川邦子氏は、弊社のインタビューで、短期的な超現実路線の人材確保策として、地元シニアのプチ勤務を提案した。「即戦力の人材はまず地元の人で固めるべき。地元の人の活躍という意味でも価値があり、地元の活性化への貢献にもつながる」と。

 お手伝いと旅を掛け合わせた人材マッチングサイト「おてつたび」を運営するおてつたびの動きも見逃せない。京丹後市観光公社と連携し、冬のカニシーズンの宿泊施設の人手不足解消に一役買っている。20年の連携開始以来、市内でのおてつたびを通じたマッチングでは、累計87人が宿泊施設や観光業で働き、地域の人手不足解消に貢献しているという。

 このほか、配膳ロボットや清掃ロボットなど省人化機器の活用やITを活用した業務改善システム構築などで人手不足をカバーするのも手だ。費用はかかるが、IT補助金などを利用すれば大きな負担にはならない。  

 

 
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