【2025年観光業界のキーワード】「宿泊税」 記者・森田淳


 2024年の観光業界はインバウンドを中心に活発な動きを見せた。不安要素は挙げればきりがないが、「巳年(へびどし)」は脱皮をするヘビのイメージから、復活と再生を意味し、「巳」を「実」にかけて、実を結ぶ年ともいわれるようだ。四つのキーワード(宿泊税、人手不足、大阪・関西万博、観光立国)を取り上げ、独断と偏見で見通した。

議論に業界がリーダーシップを

 「宿泊税」が全国の自治体で議論されている。

 既に10の自治体(東京都、大阪府、福岡県、北海道倶知安町、同ニセコ町、金沢市、京都市、北九州市、福岡市、長崎市)が導入するほか、愛知県常滑市が1月6日宿泊分、静岡県熱海市が4月1日宿泊分からの導入を決定。さらに30を超す自治体で検討が進んでいるという。

 言うまでもなく宿泊税は旅館・ホテルなどの宿泊客から徴収する地方税で、地方税法に定める税目以外に自治体が独自につくる法定外税のうち、使途を明確にした「法定外目的税」。宿泊税の場合、主に地域の観光振興の施策に使われる。

 宿泊税について、弊紙は2024年8月、全国の主な旅館約200軒にアンケート調査を行った。設問は「宿泊税の導入に賛成か反対か」「仮に宿泊税が導入されるとしたらどのような形が望ましいか」など。結果、回答があった32軒のうち、宿泊税の導入に「賛成」「反対」ともに14軒、「その他」が4軒と、意見が真っ二つに分かれた。

 賛成派は「観光分野への投資が少ない中、貴重な財源になる」、反対派は「既に入湯税があるので重複する」「課税されれば宿泊数が減少したり、他県に流れてしまうことは明らか」とそれぞれ理由を述べる。

 かつて旅館・ホテルへの宿泊には、消費税とともに「特別地方消費税」が課されていたが、宿泊業界の強力な運動により00年3月31日をもって廃止された。その廃止から約四半世紀がたち、当時の運動をリアルで知らない宿泊事業者も多くなった。

 弊紙のアンケートでは、当時の業界運動を知る人、知らない人で宿泊税について意見の大きな相違は見られなかったものの、当時の運動に従事した関係者の多くは宿泊に課す税金に強い拒否反応を示す。

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の24年度通常総会で宿泊税が話題になった。委員会の活動報告で観光立国推進委員会の森晃委員長が同税に言及。森氏は税の使途が観光振興に限定されるものの、「実際にはさまざまな障壁により、われわれ観光事業者の思いとはかけ離れたものとなる場合を懸念している」と述べるほか、自治体が行う宿泊税導入の議論に際し、「われわれは特別徴収義務者の代表として、確固たるリーダーシップを発揮する必要がある」としている。

 さまざまな意見があるものの、同税の議論は宿泊業界が先導して進めるべきだとの意見には異論がないだろう。  

 
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