AIツール導入を本格化 インバウンド市場けん引
外資OTAの動きが加速している。アフターコロナにおける日本のインバウンド市場をけん引。世界トップレベルのAIテクノロジーとローカライズによるB2C戦略に加えて、国内OTAを意識した宿泊施設対応と自治体・DMO対応でシェアを拡大している。世界四大OTAの日本市場担当トップらに話を聞いた。(東京都中央区のロイヤルパークホテルで)
■出席者
・木村奈津子氏(Expediaグループ リテール日本統括ディレクター Expediaホールディングス 代表取締役)
・大尾嘉宏人氏(Agodaアソシエイト・ヴァイスプレジデント北アジア地区統括 Agodaインターナショナルジャパン 代表取締役)
・高田智之氏(Trip.comグループ 日本代表 Trip.comインターナショナルトラベルジャパン 代表取締役CEO)
・ルイス・ロドリゲス氏(Booking.comリージョナルマネージャー 日本・韓国地区担当)
(司会)kankokeizai.com 編集長 江口英一
――2024年はどのような年でしたか。エクスペディア・グループの木村さんから。
木村 5月にエクスペディア・グループでは初となる女性CEOが誕生した。名前はアリアン・ゴリン氏。マイクロソフトなどでテクノロジー分野でのキャリアを積んだ後、弊社で11年勤務。欧州におけるホテル統括、グローバル法人の管轄などをした。弊社は米国企業だが、米国以外の地域を知っている人、グローバルな視点でさまざまな物事を考える価値観を持った人がトップに立ったことは日本にとってもプラスだと思う。
24年について、旅行者向けビジネスとパートナービジネスのそれぞれについてと日本市場についてお話ししたい。
旅行者向けビジネスの一つ目はブランドの集約。弊社はグローバルで買収を重ねてきて、世界各地に数々のブランドを展開していた。これをエクスペディア、ホテルズドットコム、バーボ(バケーションレンタル)の3ブランドに集約するというマーケティング方針を立て、実行した。集約した3ブランドにフォーカスし、おのおののターゲット層、訴求ポイント、差別化戦略などを再定義した。
二つ目はプラットフォームの統一化。無数の技術革新を絶え間なく行っていく中で、一つのプラットフォームに3ブランドを載せることにより、機能改善や新機能の実装が同時に、つまりスピーディに可能となった。このプラットフォーム統一は、顧客ロイヤリティの強化にもつながり、1日のサイト訪問者数は1千万人を超えた。米国と英国では、先行して新ロイヤリティプログラム「ワンキー(One Key)」をローンチした。ユーザーが保有するポイントを3ブランドで横断的に使えるようにした。
最後にグローバル拠点の展開。コロナ禍中にあった4年間は欧米のごく限られたマーケットにマーケティング投資を集中した。24年は欧米だけでなく、アジアや中東におけるブランドマーケティングを強化している。韓国、シンガポール、香港でキャンペーンを展開。エミレーツ航空と業務提携をするなど、サウジアラビア、UAEでもマーケティング活動を強化している。
パートナービジネスについてだが、新CEOのアリアン・ゴリンが管轄していたビジネスであり、弊社全体の成長をけん引している分野だ。23年は前年比33%増、24年第3四半期は前年同月比19%増。230カ国に6万のパートナーがおり、全体的に伸びている。
最後に日本市場。日本は対日本人の販売拠点として、インバウンドの旅行先(受け入れ先)として、この2軸における重要地域として弊社内で位置付けられている。弊社調査では、23年に米国から日本を訪れた旅行者の約50%はエクスペディアを使って旅行予約を行った。またハワイ政府観光客のデータでは、23年にハワイを訪れた日本人観光客の送客(予約)経路の1位はエクスペディアだった。24年1月から日本国内でもテレビ、ラジオ、交通広告、ネットフリックスなどで、エクスペディアのブランディング広告の露出を大規模に行った。
木村氏
――アゴダの24年は。
大尾嘉 一言で申し上げると非常に良い年だった。アゴダはグローバルOTAではあるのだが、全社的にローカライズ(地域事情に合わせた現地化)を推進していて、ローカルOTAというか、グローバル・ローカルOTAといった立ち位置を目指している。
ローカリゼーションの一つがブランディング。バナナマンを起用したCMは既に3年間行っており、24年は「毎日、おトクだ。アゴダ」のキャッチコピーで価格の安さを訴求した。
大尾嘉氏
――大尾嘉さんのその髪型はひょっとして…
大尾嘉 はい。バナナマン日村さんを意識しています(一同笑い)。
会員向け記事です。