【Jack高橋のユニバーサルフードとインバウンドの未来5】日本での食の多様性の現状 その1 高橋敏也


 さて、世界の現状はお話ししましたが、日本ではどうなっているのでしょうか?

 まずは、コロナ前のデータを元にムスリム観光客がどのぐらい来ていたのかをお話しさせていただきます。

 2018年で約200万人、2019年で220万人と順調に増えていました。そうなると前回のフレンバシー「2019年の訪日外国人数訪日ベジタリアン推計データ」によるベジタリアン観光客約180万人とムスリム観光客220万人の合計が約402万人なので、2019年訪日観光客3188万人(出典=日本政府観光局〈JNTO〉)の約12%の方が食べ物に不自由していたと考えられます。

 このような状況の中でなぜ、食の多様性対応が進まないのか?とよく聞かれます。

 その理由がホテルや施設などでよく聞く言葉ですが、「食の禁忌(喫食制限)」の中に四つの項目があります。(1)病気に起因する制限(カロリー、塩分糖分等)(2)アレルギー(3)宗教上の理由(4)倫理上、主義、ライフスタイルに基づく―となります。

 (1)(2)は理解できるのですが、残念ながら(3)宗教上の理由で特定のものが食べられない、食べてはいけないというムスリムやコーシャ、ヒンドゥー、ジャイナ、五葷(ごくん)など日本人には身近ではないので全く理解できないのです。(4)も同様に地球環境を守るために肉は食べない、アニマルウェルフェアのために食べない、身にもつけないなどのベジタリアン、ヴィーガンの人たちの考え方が理解できないのです。
 理解できない、分からない=難しい=対応するのが面倒=やらないというのが、まだまだ日本の現状です。

 しかし、重要なのは、日本人の多くは、これらの人々が国ごとの特別な対応として捉えています。例えば、「ムスリム=インドネシア、マレーシア、中東の国々」のような一括りで見ていますが、実際には、そうではありません。まさに多様性なのです。

 第2回の連載でもお話ししたように、世界中が多民族、多国籍になる中で、家族や友だちがそれぞれ、国や宗教や主義などで食の禁忌が異なります。もちろんアレルギーも。「家族全員でさえ同じではない」「お父さんお母さんは、お肉食べますが、子供たちは地球の未来のために肉は食べません」のようなケースは、普通なのです。

(メイドインジャパン・ハラール支援協議会理事長)

 
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