米国からの訪日旅行者数は2024年10月時点で220万人を超え、昨年2023年の200万人を既に越えた。今後、秋の紅葉を目的とした訪日旅行客の増加、また2025年の桜を目的とした旅行や、クルーズ船の寄港数増などを考慮すると、今後も順調な伸張が期待できる。
米国人の海外旅行への意欲はコロナ禍を経て非常に高くなっている。米国商務省が発表した米国人海外旅行者数によると2024年1~6月までの半年間で米国人の海外旅行を経験した人数は5千万人を超えており、対前年同期比10%増、対2019年同期比7・3%増となっている。
中でも知的好奇心が高く、探求心やよりパーソナライズされた旅行を好む高付加価値旅行者の海外旅行意欲は高く、世帯収入が25万米ドル以上(約3750万円/1米ドル150円換算)の世帯について、今後1年以内に約3・3回の海外旅行の計画をしているという調査結果も報告されている。
高付加価値旅行者を取り扱う旅行会社からなる業界団体グローバル・トラベル・コレクション(GTC)主催の商談会では、高付加価値旅行者のトレンドとしてのキーワードは「サステナビリティ」「異文化に浸る(体験の共有)」「健康とウェルネス」「安心と安全」「高品質な体験」が挙げられており、日本はそれらを満たし文化的な多様性を体験できるという点が評価され、トップデスティネーションの一つとして選出された。
JNTOロサンゼルス事務所が実施した招請事業でも、高品質な体験として、特別なアレンジメントによる寺社仏閣での僧侶・宮司案内による特別参拝や美術館の学芸員による特別レクチャー、工房訪問での職人による解説などを組み込んだが、その道のプロフェッショナルによる解説や、「観る」にとどまらず、文化的背景に触れられるコンテンツに対する満足度は高い評価を得ている。
高付加価値旅行者向けの体験型コンテンツも各地で造成されているが、日本人にとっては当たり前のことも、日本文化になじみがない米国人にとっては、一つ一つの体験が新鮮であり興味深いものとなることから、体験を提供する側やガイドがその文化的背景や意味合い、ストーリーなどを伝えることが旅行者の満足度を高めるうえで重要な鍵となっている。米国人旅行者は「友人・知人から」「口コミサイト」などを参考に旅行目的地を決定する傾向にあることから、旅行者の満足度を高めることが、さらなる誘致へとつながっていく。
旅行アドバイザーとの商談の中で、訪日旅行の課題としてよく指摘されるのは、地方への訪問を希望するが、どのようにアクセスしたら良いかが分かりづらいという点だ。コンテンツ単体での紹介にとどまらず、周辺部で他に何ができるのか、どの程度の日数が必要かなど具体的なサンプル行程等を示すことができれば、より誘致の可能性が期待できる。いまだゴールデンルートへの訪問が多い米国市場だが、確実に地方訪問への関心も高まっており、その需要に応えていくことが求められている。
(観光経済新聞2024年12月16日号掲載コラム)