【VOICE】キャッシュレス決済 淑徳大学経営学部観光経営学科 教授 朝倉はるみ氏


淑徳大学経営学部観光経営学科 教授 朝倉はるみ氏

観光消費拡大の一助に

 淑徳大学観光経営学科では、観光産業のすそ野の広さや、地域経済における観光の役割の重要性を、さまざまな科目の中で教えている。最新の「観光立国推進基本計画」(2023~25年度)でも、「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」の三つをキーワードに掲げ、地方経済の活性化を観光の力、つまり旅行消費額増加によって実現しようという国の意向が読み取れる。

 自身の国内旅行経験から、地方観光地ではいまだ「キャッシュレス決済」が浸透していないように感じている。地方観光地での消費促進策として、インバウドに向けては免税店増加に国が取り組んでいるが、日本人旅行者に対しては、キャッシュレス決済の導入も効果があるのではないかと考えている。観光地での支払いの際のストレス(何種類もの現金の出し入れ等)が軽減されるからである。訪日外国人旅行者にとっても、キャッシュレス決済ができれば、両替の手間暇がなくなり、異国で大金を持ち歩く必要がなくなる。

 日常生活圏と地方観光地でのキャッシュレス決済のギャップ体験から、18年度から観光地におけるキャッシュレス決済の研究を続けてきた(20~22年度はコロナのため中断)。この研究では、長野県白馬村を研究対象地として、村や白馬商工会の協力のもと、19年と23年に村内事業者対象のアンケート調査を行い、キャッシュレス決済手段の導入状況や、未導入要因などを検証した。19年度以降、国や白馬村が実施したキャッシュレス決済導入推進事業の効果があったとみられ、23年の導入率は19年より大きく増加した。特に、電子マネーとQRコードの導入率の増加が顕著であった。

 消費者庁「店頭購入及びキャッシュレス決済に関する意識調査結果」によると、(消費者の)キャッシュレス決済利用頻度のうち、「よく利用している」の比率は徐々に増加し、22年2月には64・0%に達した。

 BtoCのキャッシュレス決済はコロナ前から官民連携で推奨されおり、消費者(旅行者)にとっては決済手段の多様化、事業者にとっては売り上げ管理の手間暇の削減など、双方にメリットがある。今後は、観光地においても他国のQRコード決済の導入や、クレジットカードのタッチ決済、スマホによる電子マネーやクレジットカード機能の代替など、さらにキャッシュレス決済の利便性が向上し、観光消費拡大の一助となることに期待したい。

 

 

 
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