
下諏訪町観光振興局観光推進部長 井上健太氏
日常に価値を見いだす現場目線の観光地域づくりを
私たちは長野県下諏訪町を「観光都市しもすわ」とするため、持続可能な観光地域づくりに取り組んでいます。その中で力を入れていることが、目的を持って町に来訪、滞在をしていただくための着地型ツアーの企画実施です。特徴は主に宿泊商品を、自らの手で企画、募集、ツアー同行まで行い、来訪者のタビマエからタビアトまでの一連に現場レベルで関わることができる点だと思っています。
来訪者の需要と、地域の魅力や課題、それぞれに寄り添った旅行商品を展開しています。下諏訪の魅力を知っていただくだけでなく、地域を好きになって、再訪いただく。地域とつながり、応援したくなるような「下諏訪ファン」を増やすことを大切にしています。
年間約25種のツアーを展開しているうち、代表的なものは、このたび観光庁の「第2回サステナブルな旅アワード」で名誉ある大賞をいただくことができた、下諏訪長期滞在の旅5日間です。日ごとに旅のテーマを変えながら、通常立ち入り禁止の縄文遺跡、普段見られない江戸時代の秘蔵、個人では知り得ない寺社仏閣や大自然の魅力を5日間かけてじっくりお楽しみいただきます。
当ツアーを含め、来訪者や外部の方からは、地元ガイドの質の高さを褒めていただくことが多く、私たちとしても大変うれしく思っています。地域密着型の旅行会社だからつながりを持つことができる地元の皆さんこそ、下諏訪の大きな魅力だと考えており、ツアーのコンセプトには「人に出会う町」を掲げています。考古学が専門の縄文遺跡の発掘者、江戸時代から続く宿場の本陣のご当主、伝統文化の継承活動をしている皆さん。地域の皆さんがツアー当日は地元ガイドになって、自身の日常を語ることで、来訪者は自分も地域の中に入っている感覚を味わうことができて、楽しく学びを深めることができます。
地元にとっての日常が来訪者にとっての非日常であり、そこに価値を見いだすことは、日常であるだけに難しいことかもしれませんが、日本全国の先駆的地域にはその演出力の高さが備わっているのだと思っています。引き続き着地型ツアーの開発は推進しますが、私たちが目指す観光地域づくりは、来訪者、観光に関わる事業者だけでなく、住民の皆さんを含む地域の理解と協力が必要になります。観光を通じて地域の皆さんの日常を守り、より良いものにしていくために。そして下諏訪町だけでとどまらず、周辺地域が一体となって持続可能な地域を目指していけるよう、現場を知る私たちだからこそ、できることがあると考えています。
下諏訪町観光振興局観光推進部長 井上健太氏