気仙沼 クルーカード事業を実施
宮城県気仙沼市は特定第三種漁港都市で、全国有数の漁港都市です。しかし2011年の震災において主要産業である水産業は壊滅的なダメージを受けました。水産業の本格的な再生までには長い時間を要することが予想されたため、地域外の外貨を獲得するために13年には観光戦略を策定、以来、本格的な観光の産業化に取り組んできました。
商品づくり・人づくり・仕組みづくりを3本の柱に据え、二度の海外視察も行うなど、戦略の具現化を進めてきました。震災後のさまざまなご支援をいただく中で商品づくり・人づくりは順調に進みましたが、仕組みづくりには課題が残りました。
観光に関わる組織(市・観光協会・商工会議所など)の事業を検証(漏れ・ダブりの棚卸し)すると、広報活動は全組織がダブってやっていて、逆に具体的な観光戦略の実施や検証などは完全に漏れてしまっていることが分かりました。また、地域内の取り組みがバラバラで、行政・民間が縦割りで連携がとれておらず、観光施策の評価も肌感覚で行われ一過性のものでした。
さまざまな議論の末、私たちはスイス・ツェルマット型のDMOの構築に取り組むことにしました。
目的は仕組みづくりや単なる観光業の振興ではなく、最終的にはお客さまが満足し、住民が幸せになり、まちが豊かになることです。そのためには、キャッシュフローを高めて稼ぐ、限りある資源・資金を効率的・効果的に生かして地域にお金を落としてもらい地域内で回すことが必要で、そのための機能であり、仕組みづくりと位置付けました。
気仙沼の特徴は、マネジメント体制の構築とデータを活用したマーケティングにあります。市長を代表者とする気仙沼観光推進機構を設立し、各組織の間で目標の明確化と意識・危機感を共有。各団体間の適正な役割分担により漏れ、ダブりをなくす。さらにPDCAの進捗(しんちょく)管理を進めています。
機構による市内外の顧客を対象にした「気仙沼クルーカード」事業の実施により、顧客データを一元化し、データに基づく販売促進策により、外貨獲得と地域消費額を増やす地域マーケティングを実践。これらの展開は地域経済の可視化にも役に立っており、さまざまなステークホルダーによる対策の議論もしやすくなるという効果も生んでいます。
株式会社気仙沼のイメージで役割分担を明確化し地域マネジメントの仕組み化を図る。観光の領域を超えていわゆる地域経営を目指しています。
気仙沼商工会議所会頭 男山本店代表取締役社長 菅原昭彦氏