【VOICE】プレーヤーは表舞台に出よう 日本観光振興協会 理事長 最明 仁氏


日本観光振興協会 理事長 最明 仁氏

増える観光のリスク要因

 お恥ずかしい話ですが、先日、プライベートでオーストラリア・シドニーを訪問した際、空港から市内のホテルまで乗ったタクシーで、いわゆる「ぼったくり」の被害に遭いました。公式スタンドから乗車、ライセンスを持った車だったことで安心したのと、30年前にJNTOシドニー事務所所員として3年間駐在し、その後何度か出張した時も一度もお金のことで嫌な思いをしたことがなかったので油断していました。

 オーストラリアはシドニーオリンピック招致が決まってからほぼ一貫して高い経済成長を遂げてきた国です。製造業は振るいませんでしたが、多くの移民を受け入れ多文化主義政策を取り、観光をはじめとしたサービス産業、豊富な天然資源とほぼ自給自足の農畜産業を背景に国は富み、シドニーやメルボルンといった大都市では急速に増える人口への対応のため、さまざまなインフラ投資も盛んに行われています。

 これは規制緩和と民間資金を活用した政策が功を奏したと言われ、欧米を中心とした汎用の技術をそのまま積極的に取り入れスピード感をもった開発が進んだ結果だと考えています。

 市中はほぼキャッシュレス、ライドシェアもすっかり定着していますが、一方、影響を受けたタクシーの一部に地理不案内の外国人旅行者から巻き上げようという不心得者が横行したり、ホテルや飲食店も価格の高騰に残念ながらサービスレベルが追いついていなかったりと、この先観光地としての評価を下げてしまうリスクを抱えているなと感じました。

 過度の規制緩和でガバナンスが緩んだり、コンプライアンス違反が増えたり、水面下に潜ってしまい実態が可視化できなくなっていることが起きています。日本でも海外のOTAを通じての予約手配が一般化し、規制緩和の一方、観光ガイドや民泊の実態が見えにくくなっているのではないか、羽田や成田空港での違法ハイヤー等々、わが国が目指す高品位、安心、安全な観光の提供そのものを損なうリスク要因が増えてきていることに危機感を持っています。

 ここ数年、日本でホテルや観光施設に海外から多くの事業者が経営に参加し、投資もされてきています。ところが日本の観光産業を議論する場に当事者が姿を見せずもっぱら個社の利益追求に勤しんでいるというのが私の見方です。

 すべてのプレーヤーにいかに表舞台に出てきてもらい、日本の観光産業のあるべき姿、ビジョン策定を同じテーブルでともに議論する場を作っていくのか、私が取り組むべき課題と考えています。

 

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒