【VOICE】ポテンシャル高い「はじまりの地・奈良」の魅力を磨き上げる 奈良県観光局長 竹田博康氏


奈良県観光局長 竹田博康氏

これからの奈良の観光

 今、奈良公園周辺はコロナ禍前を上回る観光客が押し寄せており、少しオーバーツーリズム気味となっています。ただ、この現象は奈良公園周辺エリアに偏り、それも10時ごろから18時ごろの時間限定で、さらにはインバウンドが観光客の9割程度を占めているように思われます。一方、奈良県内のそれ以外の地域ではインバウンドを含めた観光客はまだまだ少なく、さらなる地域の磨き上げが必要です。

 これまでの奈良県の観光政策を振り返ると、他府県と比較して社寺をはじめとする豊富な観光資源はポテンシャルが高いものの、インバウンドなどターゲット層には発信した情報をうまく届ける対策を講じないまま、ただ来訪を待つだけとなっていることから、「大仏さま」や「奈良のシカ」のキラーコンテンツがある奈良公園周辺に偏り、滞在時間も伸びずに日帰り観光が続いてきたのではないかと考えています。まさに、ポテンシャルが高い奈良を安く売り、浅い知識で奥深く奈良を語れず、狭い奈良公園周辺だけに集中させてしまっている、「安い」「浅い」「狭い」という状況に陥ってしまっています。

 このような反省に立ち、本県では観光に関わる民間の知見を生かし、観光を産業として持続的に拡大し、本県の経済の発展を図るものとして、本年5月に観光戦略本部会議を立ち上げ、新たな歩みを始めました。奥深い奈良の個性を引き出すために本部会議の下に地域ごとに部会を設け、民間の知見をお持ちの方や地域で活動される熱い人の思いをお聴きして「カルテ」としてまとめ、解決できる支援策である「処方箋」として実践的な施策、取り組みを進めていくこととしています。

 本県の南部東部地域は、今後も人口の減少傾向が続き、集落の存続が危なくなってくる地域も増えることが予想されますが、「暮らし」や「営み」がないところに観光は成り立たないことは言うまでもありません。地域の皆さんと寄り添って課題を解決する地域づくりこそが経済の活性化につながり、観光地としての魅力の底上げになると考えています。

 「はじまりの地・奈良」の観光における強みは、「暮らし」「営み」に加え、「祈り」があり、1300年前にさまざまなことにチャレンジした精神が宿る場所であるということです。今後は、これを念頭に置きながら、地域の皆さんとともに膝を突き合わせ、トライ&エラーを繰り返しながら実践的な観光施策に取り組むことにより、地域が元気になるとともに本県の観光消費額の大幅な増加を目指します。


奈良県観光局長 竹田博康氏

 
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