Web広告表示の適正化
コロナ禍の停滞から脱却して、観光地はオーバーツーリズム対策を行わなければならないほどのにぎわいを取り戻している。日常を離れての旅の楽しみは、観光施設の見学や自然との触れ合いのほか、地元の名物料理、温泉や部屋からの眺望があり、これらを想像しながらのワクワク感は老若男女を問わず、いつの時代であっても変わらない。
旅行広告に掲載の「黒毛和牛」「天然温泉100%」が、実際には「輸入牛肉」「源泉に加水した温泉」であったならば、失望感だけでなく、企画実施した旅行会社に対しての不信感が生じる。当協議会では、このような虚偽、誇大な広告を規制する自主ルールとして、消費者庁、公正取引委員会から認定を受けた「募集型企画旅行の表示に関する公正競争規約」を運用し、旅行商品特有の詳細かつ正確な情報の提供とともに、表示の適正化に取り組んでいる。
旅行商品の情報を新聞広告やパンフレットで入手していたのは過去の話。今やパソコン、スマホで入手する時代。当協議会が空港イベントで実施した「旅行商品の情報入手に関するアンケート調査」(2023年7月)によれば、「Web広告・SNS・アプリ」との回答が59・8%と高い割合を示している。旅行会社の中には紙媒体の広告を廃止し、Web広告に全面移行した会社もある。Z世代が購買の中心となる近い将来、この割合はますます高まっていくことだろう。
Web広告は、作成期間の短縮や旅行に興味がある人にピンポイントで訴求できる旅行会社にとってのメリットがある一方、重要事項が数段階画面遷移しないと表示されない、文字が小さく見落としがちになる消費者にとってのデメリットがある。不当表示の疑義がある調査の観点からは、修正の痕跡が残らない、期間終了後の広告削除によって表示自体が存在しないといった困難性が伴うことも想定される。
さらに、昨年10月には、インフルエンサーなど第三者に依頼して作成された事業者の広告か否か判別困難な広告を不当表示として規制するステマ告示が施行され、対応に苦慮することも考えられる。これらWeb広告への対応として、会員の広告をチェックし、不適切な広告には改善の指導を行うなど、不当表示の未然防止を図っているが、今後も工夫を凝らして継続する必要性を感じている。
来年1月に当協議会は設立40周年を迎えます。観光を取り巻く市場環境の変化に対応した規約の見直し、運用の改善などを通じて、規約の目的である消費者の自主的かつ合理的な商品選択に役立つよう努めていきたいと考えています。
旅行業公正取引協議会常務理事 杉浦賢司氏