【VOICE】地域の広域連携がピンチを打開する 宇都宮東武ホテルグランデ 総支配人 熊井 尚 氏


熊井総支配人

旅行者の滞在期間増加を目指しての効果的な発信

 コロナ禍が2020年初頭より本格化し、観光産業に深刻な打撃を与えて間もなく2年を迎える。14年頃より、全世界的な旅行需要の急増、国策による訪日観光客の誘致、東京五輪の誘致などでインバウンド需要が増大し、客室稼働、単価を押し上げ、新規ホテル開業がピークを迎えたが、コロナ禍の長期化により、宿泊産業を筆頭に経営維持に深刻な状況が続く。UNWTO(国連世界観光機関)の最新データでは、21年7月の世界の観光客数(国際観光客到着数)は5400万人で、19年同月比(1億6400万人)で約67%減少したものの、20年4月以来最も良い数字となった。しかし今年11月現在、世界全体で再びコロナ感染者が増加しており、収束の兆しがかすみつつある。

 インバウンドが19年の状況に回復するのは早くて23年後半との見通しがある一方、国内市場では、本年6月に閣議決定された観光白書によると、20年7月にGo Toトラベル事業が始まり、20年12月までの利用人泊数は少なくとも約8781万人泊で、宿泊旅行の平均泊数は1件当たり約1.35泊、1泊での利用が最も多く約82%であった。ワクチン接種が進み、政府は同事業の再開を検討しているが、新たな変異型ウイルスの出現に消費者の旅行マインドは上昇下降の連続である。

 コロナ禍でテレワークなどが普及する中、企業での休暇取得の分散化に資するワーケーションやブレジャーを含む「新たな旅のスタイル」の普及、啓発に取り組まなければいけないと感じている。国内旅行でも、滞在型、体験型へ観光のあり方が変化しつつあり、地域住民の意向も汲み取りながら理解と協力が得られるような取り組みを進め、持続可能な観光の形成を目指す必要がある。地域住民や自然環境、地域の歴史文化を尊重し、旅行者が意識や行動に責任を持つ「レスポンシブル・ツーリズム」への取り組みを推進し、観光コンテンツ造成とともに、地域の文化や自然保護活動などの情報提供に努めなければならない。

 埼玉(北部)や栃木、群馬、茨城など北関東エリア各県は、毎年発表される「都道府県魅力度ランキング」で例年下位にランクされ、東京から近いこともあり都内からの日帰り客が多く、宿泊者数が少ないのが共通の課題だ。県をまたいで広域に連携し、各県の魅力ある観光資源を組み合わせ、昨年のGo To事業での実績である1.35以上の滞在泊数を目指したい。周遊ルートの造成と磨き上げ、デジタルマーケティングを活用した情報の発信を、宿泊施設、観光施設、運輸機関、行政、商工会議所、経済同友会、旅行会社、地元商店街など関係する全機関と共有しながら進めたい。

 

熊井総支配人

 
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