【VOICE】変化に気づき変革を ジェイアール東日本企画 常務取締役・チーフデジタルオフィサー 高橋 敦司氏


高橋敦司氏

コロナ禍明けの観光業界

 コロナ禍が明け、最初のGWが終わった。鉄道や航空機の利用状況もかつてと同じ数字に近づき、観光地はにぎわいを見せている。人の動きを封じ、まるで観光の仕事が社会悪かのように叩かれた3年余の時間。再び人が各地を旅し、それを受け入れる日常が戻ってきたことは実に喜ばしい。

 コロナはさまざまなものを破壊し、さまざまなものを変えた。その多くはもとには戻らないだろう。貸し切りバスが大幅に減り、バスツアーはおろか教育旅行の対応も難しい地域が出てきた。旅館やホテルを中心に地方のサービス業の担い手は大幅に減少し、失った雇用を再び戻すことは相当な困難を極めている。飲食店も同様。泊食分離が叫ばれて久しいが、それが浸透する頃には分離した食を担う料理人もサービス係も地域にいないという状況が現実になりつつある。

 一方、コロナ禍はデジタル領域の著しい成長をもたらした。人との接触を避けるという目的を発端にキャッシュレスやオンラインサービスが急拡大し、今では観光施設の多くがWebでの事前予約を取り入れている。スマホひとつあれば1日わずか数本の路線バスでも正確に時間を表示できるようにもなった。法律で対面記帳にこだわっていた宿帳の記入もいつの間にか画面上でできるようになりつつある。

 訪日外国人はこの3月には単月で初めて300万人を超え、もはやコロナ禍などなかったようだ。彼らを確実に取り込んだ地域や施設はあっという間に人であふれ、客単価も売り上げも上昇している。「インバウンドを受け入れることの重要性」と各地を説き歩いていた日々が懐かしい。一方で昨年の日本人のパスポートの保有率は17%。海外旅行に出かける日本人の減少で確実に国際的な存在感を失いつつある。旅の予約手段もがらりと変わった。かつて旅行会社にすべてを委ねていた時代と違い、いまはお客さまの旅に対する思いを受け止め、個々人にあわせたサービスを提供する責任が地域の現場にある。

 もはや当然の景色となったときに、今更「インバウンド」や「デジタル」を特別なこととしてとらえ、さまざまな対応を取るのでは遅い。地域の格差はここに出る。既に10年前ころの取り組みの差がコロナ禍という変数を加えていま現実のものとなっている。昨今話題のオーバーツーリズムも、インバウンドやデジタルに正面から向き合った地域から直面する新たな課題であって、その克服はさらなる成長を促すだろう。

 変化に気づき変革を。それでこそこの産業の未来は明るいものになるはずだ。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒