【VOICE】宿泊施設の経営 JTB旅連事業 代表取締役 戒田智彦 氏


外国人雇用を付加価値やイノベーションを創出するトリガーに

 専門性、技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることを目的に在留資格「特定技能」が創設され、この制度によって2019年4月から宿泊業界でも外国人の就労が可能になった。出入国在留管理庁の公表資料によると、特定技能1号在留外国人の数は13万7588人(23年1月末現在)で、その8割は元技能実習生。技能実習制度の対象分野に宿泊業が追加されたのは20年2月からで3年経過していないため、宿泊分野の特定技能在留資格者に元実習生がいない。

 また、実技が受験科目に含まれない外食業、介護と比較して宿泊分野の合格率は低く、受験機会も制限されている等の事情で、宿泊分野の技能実習在留資格者は極めて少ない。外食業の特定技能資格者を採用し、宿泊施設のレストラン、飲食店で飲食物調理・接客に従事させているケースも見られるが、制度導入の本来目的に達しない。

 送り出し国や試験実施機関と連携して宿泊分野の特定技能資格者の底上げを図ることが、深刻化する人手不足対策の一手になると思料する。

 日本は生産年齢人口の減少で経済を支える中核となる年齢層が不足している。デジタル化による生産性の底上げや子育て中の女性、高齢者に合った労働環境づくりとともに、外国人の受け入れを拡大し、労働現場を支えてもらうことは避けて通れなくなってきている。外国人材の活用に向けた政策は転換点を迎えているが、外国人労働者が短期間で「お金を稼ぐ・仕送り」のためでなく、長期間で「スキル獲得、キャリア向上」を目的に働ける制度の設計を期待する。個人がその能力や適性に合ったスキルを磨き、多様なジョブや複数の職場にまたがってキャリアを自律的に実現できるように、在留資格のステップアップ制や公的な教育、自学を支援する仕組みを求める。

 受け入れ側の宿泊施設では個人の能力を最大限引き出して活躍してもらうための環境整備と人材をつなぎ留めるための制度整備が欠かせない。職務(ジョブ)内容を明確にした就業規則の整備と外国人が職場に溶け込めるような受け入れ態勢の強化、能力の向上、職務(ジョブ)のスキルに応じた成果主義的な職務賃金制度の導入、公平性、客観性、透明性の3原則に基づく人事評価制度の設計が成長意欲を促す。

 外国人材を単なる人手不足の数合わせではなく、豊かなアイデアや新たな付加価値を創造し、生産性、収益力を向上するイノベーションを起こす風土醸成の担い手と捉えた雇用に迫られている。

 
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