【VOICE】宿泊業に求められる「自己変革」 ダイブ 代表取締役 庄子 潔氏


ダイブ 代表取締役 庄子 潔氏

働き手は必ず確保できる

 新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、コロナ禍の渦中で猛烈な逆風に見舞われた宿泊業は急速に活気を取り戻しました。インバウンド需要も、コロナ禍以前の実績を上回る勢いを見せています。

 一方、総務省の労働力調査によると、2023年度の宿泊業の従事者数は58万人で、2019年度の69万人と比べて11万人も減少しました。この数字が表しているのは、コロナ禍を機に他業界へと流れた労働力が戻っていないという厳しい現実です。

 もちろん、宿泊業には他業界では味わえない魅力があります。政府は観光立国の実現を国策の柱に掲げており、その最前線で活躍する醍醐味(だいごみ)は格別でしょう。

 ただし、宿泊業界は給与水準の低さや長時間労働といった慢性的な課題を抱えているのも事実です。安定的な働き手の確保には、迅速かつ思い切った待遇改善が欠かせません。

 苦労の末に確保した従業員の定着には、働く意欲を持ちやすい職場環境や組織文化の醸成も不可欠です。宿泊事業者は顧客満足度だけでなく、従業員満足度も重視する必要があります。

 さらに、今こそ目を向ける必要があるのは外国人材の活用です。国はこの7月、在留資格の特定技能に係る制度運用を大幅に緩和しました。人手不足に悩む宿泊業にとってまたとない追い風を生かす上では、長期的な視野に立った採用計画や教育体制など外国人材の受け入れ環境を整えなければなりません。

 コロナ禍で人材派遣・紹介需要が低迷した中、当社もあらゆる業務を徹底的に見直しました。人間が関わる必要のない仕事を洗い出し、代替可能なシステムを構築したことで得られたのは、コロナ禍以前より少ない人数で高い利益率を生み出せる強い経営基盤です。実際に2019年と比較して2023年は営業効率が180・8%増加しています。

 豊富な求人情報を検索し、応募できるLINEアプリも業務の効率化に役立ったと同時に、多くのユーザーに手軽さが受け入れられて登録者数が伸びています。

 こうした経験を還元しようと、将来的には宿泊事業者のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援することも考えていますが、中枢の集客業務さえ代行会社に依存しがちな宿泊業の風潮には懸念もあります。

 ノウハウなど知らなくても、よく調べれば実行できることは案外多いはずです。そうして多くの業務を自社の力でこなせるようになると、利益率も自然に高まるでしょう。

 アフターコロナ時代の宿泊業界は、そうしたことに気付き、手間を惜しまず「自己変革」に挑む事業者こそが成功すると思います。

ダイブ 代表取締役 庄子 潔氏

 
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