【VOICE】手は離しても目は離さない顧客満足 株式会社リクルート CS・ESアドバイザー 山田修司氏


株式会社リクルート CS・ESアドバイザー 山田修司氏

お客さまへの関心がつくるもの~出張の晩に考えたこと~

 「いらっしゃいませ、こちらのカードにお名前をご記入願えますか」。ホテルのフロントでよく見るチェックインの風景。コロナ禍以降は、接触を避ける目的と、生産性向上という観点から、自動チェックイン機を導入する施設も確実に増えてきています。出張族や業界関係者の間では、折々に「人か、機械か」といった話題が、酒席で交わされることも多く、時には会議のアジェンダにも上ることも頻繁な模様。しかし、年間100泊近くホテルに宿泊する一出張族の立場から言えば、「早くキーを渡してくれれば、どちらでも構わない」というのが率直な感情です。

 このような「人か機械か」や「AIは人にとってかわるのか」といった議論は、しばしば利用者の本当のニーズからかけ離れているように感じられます。デジタル技術を活用することで、顧客満足(CS)と従業員満足(ES)の双方が実現するのであれば、それに越したことはないと私は考えています。

 今、日本全国のホテルや旅館のフロントで失われつつあるものがあるとすれば、それは「このお客さまがこの町に来た目的は何か? 観光か、ビジネスか、それとも…」や「このお客さまはどうして私たちのホテルを選んでくれたのか? 価格か、立地か、サービスか、それとも…」「このお客さまは今、どんな気分なのか? 私たちと話したいのか、早くお部屋に行って休みたいのか、それとも…」という『お客さまへの関心』なのではないでしょうか。もし私たちが、効率や生産性を優先し「お客さまを観る」という仕事をなおざりにしてしまっているのであれば、その影響は必ずどこかで表れてくるはずです。

 そんなことを考えていた出張先のホテルの1室で、AIやDXの活用による収益向上と『お客さまへの関心』をどのように両立させるかについて思いを巡らせていたその晩。ふと気付くと、ホテルの部屋の片隅のズボンプレッサーを発見しました。翌日ホテルの方に尋ねると、「山田さんはいつもご利用なさるのであらかじめ置いておきました」と一言。もしかしたら、宿泊者本人ですら気付かなかったであろう、さりげない、ちょっとした心遣いに感動し、この瞬間、このホテルへのリピートを確信してしまいました。見守られているということが、これほど爽やかで心地よいものだとは。

 手は離しても目は離さない、そんなDXやAIを活用した顧客満足(CS)の進化を、今年も精一杯考えていきたいです。

 
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