「志」持つ人材の育成を
5年ほど前、経済産業省から観光庁に出向し、「観光地域振興部長」を務めた。時はコロナ前、インバウンド目標に向けて、地方公務員や民間の方々も結集し、「観光×地域振興」を考えた1年間で、「消費額」を意識した。地域の持続的発展のため、「経営視点」で取り組む仕掛けが大事と信じ、DMOを一緒に考えた。他にも、酒蔵、映画ロケ、それにアドベンチャーのツーリズムなども有望と見た。そのため、たくさんの地域を訪れたが、圧倒的なキーが「人材」だと確信した。「志を持って地域に貢献する人たちのネットワーク」が、観光産業にあった。
経産省に戻ってもそのことが頭にあった。例えば、特許庁で地域産業をまとめる「地域団体商標」を振興した。近畿経済産業局長では、2025年大阪・関西万博に向け各地のブランドを磨き上げ、世界につなげる「12ブランド・プロジェクト」を立ち上げた(12ブランド=鯖江のめがね、信楽焼、丹後織物、和束茶、泉州タオル、播州織、三木の酒米等、丹波篠山の黒大豆等、淡路島の食と香り、奈良酒、広陵くつした、和歌山ニット)。いずれの時も「志とおもてなしのネットワーク」を持った観光産業を意識した。
また、運輸局と連携し、ポストコロナと人手不足を見据え、経産省が親しいデジタル業界と観光業界をつなげたりもした。
昨年、政府全体の人事部である「人事院」にて、公務員試験や官民交流制度に携わった。多様性の時代、官庁自体もイノベーティブにならねばと、中途採用や官庁への出向などを増やすべく、観光庁での出会いも思い浮かべながら制度を改善した。志を持つ人たちをもっと政府に迎え入れ、一緒に取り組んでいきたい。門戸は開かれているので、人事院にでも各省庁にでも問い合わせてほしい。
観光産業は「おもてなし文化」にあふれている。一般化すれば、カスタマーエクスペリエンス。官庁でも、人材育成でその取り組みを参考にしたい。女性活躍の面でも、女将という独特な役割も注目したい(そういえば「取締役女将」という名刺も見た)。
ポストコロナが見え、次なる政策の挑戦が求められる中、昨年末、各省横断の人材育成責任者になった。
不透明な時代、官庁人材も高度化が必要だ。インバウンド回復が見込まれ、また2年後の万博が具体化する中、飛躍が期待される観光産業だが、将来に向けた改革も必要だろう。そうした取り組みに寄り添って一緒に頑張る、志ある公務員育成に向け、尽力したい。引き続き、人材育成についても、皆さんと議論をしていきたい。