【VOICE】新しい観光や地域と触れ合える機会に 大阪成蹊大学国際観光学科長 松田充史氏


大阪成蹊大学国際観光学科長 松田充史氏

大阪・関西万博

 2024年7月、20年ぶりにお札が新しくなりました。その1万円札に描かれているのは渋沢栄一です。近代日本経済の父と呼ばれる渋沢が設立に関与した企業は500以上といわれ、その中には鉄道やホテルといった観光関連企業も多く含まれています。その渋沢が東京商業会議所の初代会頭であった1893年に「喜賓会Welcome Society」は設立されました。設立目的を「本邦ノ風景美術ハ外国人ノ感賞スル所ニシテ、遊覧人ノ外国ヨリ来ル者年々増加セリ、此等外国人ノ我邦ニ費ス所ハ本邦人ノ利益ニ帰スル少ナカラス、故ニ我邦ニ於テ旅店ヲ改良シ、案内者ノ制ヲ完全ニシ、成ルヘク旅行者ノ愉快ヲ与フルノ方法ヲ設ケ、外国来遊者ヲ増加スルハ、国家ノ声誉ト利益トヲ増進スルニ極メテ必要ナリ(注)」としていました。ホテルを良くしてガイド制度を充実させ、外国人旅行者を増やすことは国際社会での日本の地位向上と経済発展に必要だとしています。長く鎖国をしていた日本、そこからわずかな時を経た時にあったインバウンドへの課題が現在と変わらないことに驚くばかりです。

 さて、渋沢を主人公にしたNHK大河ドラマ「青天を衝け」第22話に日本が初めて万国博覧会(万博)に参加した話が描かれています。ロンドンで第1回が始まってから16年たった1867年、奇しくも大政奉還が行われた年に、青年渋沢を含む江戸幕府の一行がパリ万博を訪れています。ドラマでは渋沢がエレベーターに驚く様などが描かれていました。このように当時の万博は新しい技術や製品が展示されるものでした。それから103年後の1970年、アジアで初めての万博が大阪で開催されました。そして来年2025年、「大阪・関西万博」が開かれます。今日の万博は、展示から未来社会の実験場、課題解決の場として新しいアイデアの共創が期待されています。国土交通省近畿運輸局は「大阪・関西万博に向けた観光アクションプラン」を策定し、関西全域の周遊へと誘客する「関西全体のパビリオン化」をコンセプトに、観光におけるレガシーを残す取り組みが行われています。この万博がきっかけで、新しい観光や地域と触れ合える機会になればと思います。筆者も観光で持続可能な地域創造につながるように力を尽くしたいと考えています。

 この紙面が出るころは、パリオリンピック・パラリンピックの熱気で世界が湧いていることでしょう。さあ次は大阪・関西万博です。世界の注目がこの日本に集まっています。万博をきっかけに観光が地域の課題解決につながればと思います。

 (注)公益財団法人渋沢栄一記念財団「デジタル版『渋沢栄一伝記資料』第25巻2編2部2章2節1款喜賓会」、資料「青淵先生六十年史」竜門社編


大阪成蹊大学国際観光学科長 松田充史氏

 
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