【VOICE】日本のあたりまえ、世界のアメイジング! 日本旅行業協会(JATA) 国内旅行推進部長 野浪 健一氏


日本旅行業協会(JATA) 国内旅行推進部長 野浪 健一氏

日本の価値・地域の価値を再認識し稼げる産業へ

 コロナ禍が収まり訪日客も増えてきた日本において、観光に関わる素材、商品も訪日客の興味や購買力に合わせた価格設定が増えてきた。東京のホテル代や京都祇園祭のプレミアム観覧席、北海道ニセコのラーメンや海鮮丼など、これまでの日本では「えっ」と思う金額が数々現れるようになり、驚きを隠せない人も多いだろう。しかしながら、視点を変えると、今まで日本人があたりまえと思ってきた素材、サービスが実は世界ではかなり高い価値があり、その金額を払っても満足しているお客さまがいるということは、日本人がその価値を分からずに(悪気なく)「安売り」してきたとも言えるのではないだろうか。

 冬は訪日客が圧倒的に多く訪れ、何かと注目されるニセコの倶知安町では、日本で唯一、宿泊税を定率で2%に設定し、宿泊単価の上昇もあって昨年の徴収額は前年の2倍近い額になるとのことだ。そして、集めた税金を使って町と観光協会が役割を分けてリゾート地としての質の向上、魅力の向上のため、観光インフラの整備、環境保全、安心安全への取り組み、プロモーション、持続可能な観光地づくり等を進め、実施内容や金額の詳細も町のHPで公表されている。

 そして何より、全国でも珍しく観光協会の理事を選挙で選んでおり、今年4月の選挙では立候補17名に対し当選者14名、うち3名は外国人だ(ニセコエリアには世界70カ国超の方々が居住し、各国の優れた文化や考え方が多様性を波及させ国内にはない事例を生み出しているとのこと)。

 こうした倶知安町の取り組みは、地元であたりまえと思っていた自然、食、日本人のホスピタリティ等の世界での価値を再認識し、満足度を維持しながら安売りしない価格で提供し、そこで得た収益を満足度向上や持続可能な観光地づくりへ再投資していく仕組みを構築して、その判断を選挙で選ばれた方々が地元以外の視点も加味しながら行っていくという、日本の観光地づくりの参考になる事例ではないだろうか。

 私事だが都内でおいしいビールを1杯400円で提供していたビール関連施設があり頻繁に通っていたが、先日リニューアルオープンしたら、その価値を認識したのか1杯1100円になっていた。「価値あるものは安売りしない」とはこういうことか…と少々悶々(もんもん)としながらも、正しい価値を認識して世界に誇れる日本を安売りせずに売っていく動きが少しずつ出てきているのは良いことだと感じながら、観光産業全体がブラッシュアップして、稼げる産業になっていけることを願っている。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒