【VOICE】沿線を「面」として楽しむ新しい観光 株式会社さとゆめ代表取締役CEO 嶋田俊平氏


株式会社さとゆめ代表取締役CEO 嶋田俊平氏

沿線まるごとホテル

 私が代表を務める株式会社さとゆめは、JR東日本と共同出資会社「沿線まるごと株式会社」を設立し、JR青梅線で「沿線まるごとホテル」事業を展開している。「沿線まるごとホテル」は、JR東日本の駅舎や鉄道施設などを「ホテルのフロント」として活用、沿線集落の空き家を「ホテルの客室」に改修、さらには地域住民が「ホテルのキャスト」となって地域ぐるみで運営を行うことで、沿線を一つのホテルに見立て、名もなき沿線集落を舞台にした新たな滞在型観光を生み出す事業だ。

 JR青梅線は、山間部を走る路線であり、地域の過疎高齢化が進む中で多くの駅が無人駅となり、乗降客数は下降の一途をたどってきた。一方で、夏や週末は、リバーアクティビティなどを求める都市住民の来訪により道路渋滞、駐車場不足、河川敷や一部の飲食店への人の集中など、時間的・地理的な利用の偏りによるオーバーツーリズムにも悩まされている。

 「沿線まるごとホテル」は、無人駅の改札を出たらそこはホテルであるという設定を楽しむ「無人駅チェックイン」、集落の中にある湧き水、わさび田、石仏などの地域資源を地域住民のガイドで巡る「集落ホッピング」、集落の中に点在する空き家を改修した客室に泊まる「古民家ステイ」などの体験要素により、特定の「点」に人が集中せず、地域を「面」として楽しむ新たな観光行動を生み出し、こうした課題を解決する。

 とは言え、まだ始まったばかりだ。2024年5月に、JR青梅線の鳩ノ巣駅という無人駅の近隣集落に、レストラン棟、サウナ棟が開業したばかりで、古民家を改修した宿泊棟の完成は2025年春と少し先になる。ただ、こうしたハード施設が開業する前の2023年9月、「第7回 ジャパン・ツーリズム・アワード」において、最高賞である「国土交通大臣賞」と「学生が選ぶジャパン・ツーリズム・アワード賞」を受賞し、自分たちがつくってきた事業に手ごたえと期待の大きさを感じているところだ。

 青梅線同様に過疎高齢化により衰退し、鉄道をはじめインフラの維持が難しくなってきている地域は日本に多くある。この青梅線での沿線まるごとホテルの事業モデルを、同様に悩む全国各地域へ展開したいと考えており、将来的には全国30沿線(地域)ほどでの事業展開を目指している。昨今大きな話題になっている有名観光地のオーバーツーリズムも、全国に新しい目的地がたくさん生まれ、人々の行き先が分散していけば解決するはずだ。そんな課題解決のモデルを生み出したい。


株式会社さとゆめ代表取締役CEO 嶋田俊平氏

 
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