テクノロジー投資が人材確保の鍵
全日本ホテル連盟は約1400軒の会員を擁する全国規模の宿泊団体として、会員ホテルの価値向上を支援すると共に、観光立国の実現と地域の発展に寄与することを目的としており、青年部では「人づくり」の組織として活動しています。今年1月にはタイ研修を企画・実施し、JNTOバンコク事務所の訪問、現地の旅行会社や起業家と意見交換を行いました。9月には『ビジネスホテル テクノロジーを活用した未来』と題して沖縄現地研修を行い、先進的なテクノロジーを活用した実証実験を行う「タップホスピタリティラボ」訪問や現地宿泊事業関係者との活発な意見交換を行いました。
現在、訪日外国人数が増加傾向にあり、JNTO発表の2024年10月推計値では単月として過去最高記録を更新しました。円安の情勢もあり国内ホテルマーケットは過熱していますが、他方、フロントや飲食サービス、清掃において人手不足に課題を感じていると関係者から多く聞きます。多くの施設では、さまざまなテクノロジーを導入し人的サービスの代替を進めていますが、次に課題となるのは省人化とホスピタリティの両立であると考えます。マーケットの需給バランスの影響により高稼働・宿泊単価は上昇していますが、同時に顧客からの期待値も上がり、その結果、クレームにつながることや無形資産である口コミに低評価が与えられます。結果として、現場で働くスタッフのモチベーションが低下して離職につながることもあります。人手不足を解消するために省人化をしているのに、結果としてスタッフが離職してしまうのでは本末転倒です。今求められているのは省人化をするだけではなく、価値提供のポイントを変化させ品質を下げないことだと考えます。
ある施設では自動チェックイン機を導入していますが、チェックイン時間を短縮して空いた時間に、操作に不慣れな宿泊客に操作方法をフォローして感謝をしてもらい、慣れているお客さまには声を掛けず、そっとエレベーターのボタンを押すなど、ただの省人化ではなく接客の在り方について変化をさせています。その結果、口コミなど評判を落とさず省人化を実現しています。
省人化やインフレ局面におけるコストダウンも重要なテーマではありますが、今後の宿泊業界の人材を確保するためには、お客さまからの信頼や評判、スタッフのモチベーションを両立できるテクノロジーへの投資を考えることが求められていると思います。目に見えない部分もKPI設定して投資・運営する等、長期的な視点を考えられる人材として成長できるよう、青年部では研修などを企画していきたいと思います。
全日本ホテル連盟青年部部長 樋口敬祐氏