
合同会社ぼたん 共同代表ツアープランナー 中谷百香理氏
地域に寄り添い、人と地域が響き合う旅を作る
長年勤めた旅行会社を退職し、全国各地のツアーやイベントを手掛けた経験を生かして、地域活性を支援する会社を設立しました。旅する人々にどのような価値を提供できるのか、地域らしさとは何か、観光を通じてどのような地域を作り上げたいのかを考え、徹底的なヒアリングを行い、地域の人々の「気持ち」に本気で向かい合うことを大切にし、共に取り組んできました。
そんな中、湯島や上野不忍の池のほとりで活動を始めた「しのばず和めぐりの会」に出会いました。
この地は、江戸時代には寛永寺の門前町として繁栄し、参勤交代の御成道に面した由緒ある場所ですが、上野戦争・関東大震災・東京大空襲と3度の焼失により町の姿が変わり、現在では夜にはネオン街と創業何百年の老舗の伝統工芸のお店や、代々続く老舗飲食店など「名店」が共存する多様性に満ちた地域です。しかし、台東区と文京区の境界にあり、行政区ごとで行われる観光推進において取り組みが難しい状況にあります。
このように、昼の顔と夜の顔が全く異なる独特の風景を持つ面白いエリアで、コロナ禍に「地域のストーリー」を地域外の人々に伝える活動が有志によって始まりました。私はこの活動を支援し、地域が変わるには、そこに生きる人々の「想い」が全てだと改めて実感しました。一つの想いがつながって線になり、そして面になる活動が、大きな変革へと発展していく原点なのです。
地域の「想い」を観光に生かし、どのように活性化へつなげるか―。私の基本姿勢は、地域の人々と共に、小さなチャレンジを積み重ねることです。無理に大きな変革を目指すのではなく、地域が求める方向性を尊重し、実現可能な方法を提案する。そして、地域の人々に選択してもらうこと。
観光業は一見誰にでもできそうに見えるのですが、広大な事業領域であり、なかなか難しい。旅行サプライチェーンを熟知し、旅行者の喜ぶポイントを的確に把握しなければなりません。また、観光資源を台無しにしないよう、丁寧かつ正確な取り組みが求められる分野です。
観光は地域が主役。主役である地域の人々が輝くための舞台を整えていきます。
これからも地域の皆さんとの対話を重ね、地域の魅力を最大限に引き出し、持続可能な地域づくりに取り組んでいきたいと考えています。