【VOICE】観光DXの大衆化 リクルート じゃらんリサーチセンター エグゼクティブプロデューサー兼研究員 木島達也氏


木島プロデューサー

地域とともに推進

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、観光業は厳しい状態にあるが、地域の観光業では、非接触への対応や業務効率化などのため、DX化が進められている。リクルートもさまざまな業務支援ツールを展開してきたが、もう一段、進化させようと「地域消費分析プラットフォーム」の実証実験を始めた。この取り組みでは、将来的な地域観光消費額の増加を実現したいと考えている。

 当社はこれまで事業者に対し「接客以外の事務作業などで時間をとられ、お客さまへ満足のいくおもてなしをするのが難しい」などの現状の不満、不便を解消するお手伝いをしてきた。だが、今回は自治体と事業者という地域全体が「地域観光消費額増加」という課題を乗り越えるようにサポートしていく。

 現状、地域の観光をめぐる決済額や入込数の可視化は詳細にできておらず、効果検証がしづらい。季節による繁閑の差や、自然災害やコロナのようなアクシデントがあっても、その前後の実績の比較が曖昧になってしまう。そこで、われわれは自治体と消費分析プラットフォームを構築することで、データに基づいて取り組みを振り返ったり、観光戦略を設計したりして、観光サービスの変革と新たな観光需要の創出を実現するお手伝いをしたいと考えている。

 まずは、2021年11月29日に山梨県富士吉田市、12月1日に新潟県妙高市と包括連携協定を締結し、取り組みを進めている。具体的には(1)「Airペイ」「Airレジ」のような「Airビジネスツールズ」などのツールを導入し、キャッシュレス化の促進を中心としたデジタル消費基盤を増強(2)当社から該当地域の会計データや宿泊実態統計データなどを提供し、来場観光客数や決済のデータを可視化することで消費促進のための打ち手につなげていくことを進めている。飲食店がこれまで地元向けに展開していた品ぞろえや価格を観光客向けに造成することも可能にし、「旅中」での消費増加にもつなげていく予定だ。

 われわれは今回の観光DXを一つのモデルとして確立し、(リクルート的に言うと)「まだ、ここにない、出会い。」を創出し続けていきたい。例えば、多くの宿泊施設や飲食店・土産店が業務効率をアップさせ、自らが描く理想のおもてなしを実現できるように。旅行者は初めての土地へでかけたり、地域の新たな魅力を知ったりする機会が増えるようにしていきたい。そのためにも、観光DXを限られた地域や事業者だけの取り組みにせず、安価でどこでも導入できるようにする、「大衆化」を進めていきたいと考えている。

木島プロデューサー

 
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