豊かな自然を守り、未来に引き継ぐ
私たちは「ナショナル・トラスト」で日本の豊かな自然を守り、未来に引き継ぐ活動をしている公益法人です。ナショナル・トラストは、皆さまから託された寄付金をもとに、自然や歴史的な建造物を買い取って守る環境活動として、英国で発祥しました。ピーターラビットの著者ビアトリクス・ポターもこの活動の支援者で、湖水地方の美しい風景を守るために1700ヘクタールを超える土地の買い取りに協力しました。そのおかげで守られた雄大な風景は、100年以上たった今も、世界中の観光客を魅了しています。
日本のナショナル・トラストは、鎌倉で始まりました。1960年代の高度経済成長期、各地で宅地造成が進む中、鶴岡八幡宮の裏山「御谷の森」にも開発が迫りました。行政による解決が難しかったことから、英国の取り組みを参考に市民たちが立ち上がって鎌倉風致保存会を設立、全国からの寄付金でこの森を買い取って守ることに成功しました。その後、天神崎、柿田川、妻籠、知床、釧路湿原など全国50以上の地域に広がり、各地のトラスト団体が地域の大切な自然を取得し、守り続けています。
当協会はナショナル・トラストの全国組織で、自らも59カ所の土地を所有しています。特に、奄美大島のアマミノクロウサギなど、絶滅の危機にある野生生物を守るための土地取得に力を入れています。観光地については、京都の嵐山や有馬温泉エリアの森など、風光明媚な風景の一部となっている森を所有し、観光資源の保護にも貢献しています。
昨今、世界自然遺産や国立公園には多くの観光客が訪れ、自然の風景、野生生物は観光の目玉として重要な要素となっています。しかし、国立公園内にも私有地が多くあり、重要な自然があっても、規制が緩い場所だと開発されて、その自然が損なわれることもあります。
自然を守るためには、その土台である「土地」を確保することが最も重要です。森や湿原などの自然がそのまま存在し続けられるように、私たちはこれからもどんどん土地を買い取っていきます。この取り組みは、30by30目標やネイチャーポジティブなど、世界の生物多様性を守る流れを後押しするものです。
自然や野生生物を観光資源として利活用する皆さまにも、業の基盤となっている自然資源を確実に守っていくため、土地確保の重要性について知っていただきたいと思います。50年先、100年先をみすえた観光業の推進に向けて、ナショナル・トラストへのご参加、ご支援をお待ちしています。