「山梨県、富士山登山で通行料2千円」「蔵王・樹氷時期のロープウエー、混雑緩和で事前予約制やダイナミックプライシング導入も検討へ」。時期を同じくして、このような記事が報道された。蔵王の方は確定ではないが、日本が観光立国を目指すためには重要な点であるので、今号ではこちらの件を取り上げたい。
富士山の件は、端的に言うと、2024年7月1日から山梨側の5合目登山口での通行料を1人2千円で「義務化」するという内容である。もちろん賛成も反対も賛否巻き起こっているが、観光立国を目指すためにはこれは喜ばしいこととして、捉える必要があると思う。
そもそも、オーバーツーリズム対策として、総量規制のためにも有料制にするというのは世界の常識であり、日本だけが特殊であったという点をまずは理解する必要がある。そして、徴収した費用を富士山のインフラ整備に使用するとしている点からもまっとうな話であることがうかがえる。もっと言えば、世界の名山の入山料は数万円というのが多くあり、2千円では、まだ安すぎるという声もあるくらいである。
続いて、蔵王のロープウエーも根本の話は同じである。冬季にオーバーツーリズムとなり、現状の価格や仕組みであれば2時間を超える行列ができてしまったということからの緩和策の協議である。こちらも、需要が高ければホテル旅館業界ではもはやおなじみのダイナミックプライシングを導入して、収益の向上と需要の分散化を図るということで、議論自体は大いにすべき事案だと思われる。
従来の観光システムにインバウンドというパワーが加わったことで、見直すきっかけが各地で起こっている。混乱もあるであろうが、観光立国日本を目指すには必要な議論であるように思う。そもそも、日本の観光コンテンツ(宿泊も飲食も景観もお祭りも)はその価値に対して、あまりに安く提供し過ぎていたということが、浮き彫りになってきている。
これからも多くのこのような事案が生まれるであろうが、今までがこうだからではなく、ゼロベースで考え(世界の事例にも学びながら)最適化していくことが求められる時代になると予想される。
(株式会社アビリブ・株式会社プライムコンセプト 内藤英賢)