「非常に良い秋の実績であった」。そのような声を聞くことが多い9~11月の旅行マーケットであった。大変喜ばしいことである一方で、見逃してはならない事実がある。それは「日本人の宿泊者数が減少し続けている」という事実である。観光庁が発表している「宿泊旅行統計調査」によると、現在発表されている2024年8月までで、23年12月から、ほぼ一貫して前年割れが起きているのである。数%というレベルであるが、人数にすれば100万単位ではある。要因としては複数考えられるが、まずは人口減少が挙げられるであろう。特にボリュームゾーンである団塊の世代の後期高齢者化は旅行に出かけられる数の絶対数の減少を意味する。
続いて、昨今の物価高による余暇レジャー支出の切りつめも考えられる。昔からいわれるように、生活が圧迫されると真っ先に削減の対象になるのが、余暇レジャー費である。
では、なぜこのような足元の状況にも関わらず、大きな実感がないのかというと、一つは宿泊単価の上昇で売り上げがカバーできてしまっているためである。宿泊単価の上昇で人数減をカバーしているという旅館は多いはずで、そのことが日本人宿泊者数の減少という事実を見えにくくしている。そしてもう一つは外国人宿泊者数の増加である。外国人宿泊者数は8月までで前年対比30%以上増加しており、外国人宿泊者数の増加によって、宿泊者数の全体数はプラスに転じているケースも多々あり、(今の日本全体の宿泊人数推移もこの構図である)日本人の宿泊者数のマイナスが覆い隠されている。「海外ゲストがたくさん泊まっているので、日本人ゲストが泊まる部屋がなかったわ」という感覚である。
そして、この現象は恐らく長期的にみても解消することは考えにくい。なぜなら、日本人は人口減のまま推移するし、物価高が一朝一夕で解決するわけではないからである。つまるところ、今後の戦略立案において、日本人の宿泊者数は減り続けるという前提において作戦を組み立てねばならない。では、お先真っ暗かというとそういうわけではない。そのあたりは、また機会を改めて述べていきたいと思う。
(株式会社アビリブ・株式会社プライムコンセプト 内藤英賢)
(観光軽罪新聞11月25日号掲載コラム)