前号では2024年の振り返りを行ったが、今号では、これからのホテル旅館業界について述べたいと思う。例年どおり多分に主観が入った内容ではあるが、ご容赦いただきたい。キーワードは今年も三つに絞り、「エリア戦略」「日本人の減少がもたらすこと」「捨てる勇気」としたい。
まず「エリア戦略」についてである。本コラムでも触れたが、日本人全体の宿泊者数は今年に入り一貫して減少しているという事実と逆に海外の宿泊者数は一貫して伸び続けているという二つの事実を理解しておく必要がある。だが、エリア単位で見ると海外は伸びていないが、日本人は伸びているということも起きている。一つの仮説であるが、海外客の増加に伴い、宿泊費の高騰やオーバーツーリズムを敬遠し、インバウンド客がいなさそうなエリアを日本人が選んでいるという背景がある。こうなると、エリアとして海外客を呼ぶのか、減少するとはいえ、まだ絶対数の多い日本人を取りにいくのか、を戦略的に選択しその意思決定に応じた打ち手を打つ必要がエリアに求められる。
二つ目は「日本人の減少がもたらすこと」についてである。一つ目の宿泊客の減少ももちろんであるが、深刻なのは働き手の減少である。テクノロジー活用や生産性の向上は言わずもがなであるが、さらに今は「より採用力&経営力の強い施設に人が集中している」という状況が生まれている。考えてみれば当然であるが、労働環境や条件の良い施設に人が集まっており、そのような施設は実は全く人手に困っていない。
最後の「捨てる勇気」であるが、つまるところターゲティングの話である。居酒屋業界では既に起こっている「専門店化の流れ」がいよいよ宿泊施設にも訪れると予測している。「料理も、部屋も、温泉も、おもてなしもいいです」は強みを言っているようで実は何も言っていない。「ウチはファミリーのお客さまに特化しており、ファミリーのお客さまが来たら120%満足します!」。このような宿が増えてくると思う。これはつまり、戦略的にファミリー以外のターゲットを捨てるということになるのであるが、その勇気が皆持てないのである。
以上が25年の業界の動きの予測であるが、また25年に一つ一つ掘り下げていきたいと思う。
(株式会社アビリブ・株式会社プライムコンセプト 内藤英賢)
(観光経済新聞1月6日号掲載コラム)