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原准教授
米国全体のホテル損益分岐点は過去30年程度で生産性が上がり、現在、38%程度の稼働率で損益分岐すると言われているが、その観点からすると、人口2199万人のフロリダ州はいったん6月後半に40%超の稼働率で何とか破綻せずに運営できるレベルまで市場需要が回復したものの、7月に入ってまたCOVID―19の1日当たり新規感染者数が1万7千名を超えるような状況となり、40%程度にまで稼働率が落ちてきている。一方、オーランドはユニバーサルスタジオやウオルトディズニーワールドの大型テーマパークが営業再開した影響もあり、損益分岐点水準には未達ながら、フロリダ州全体のCOVID―19の再感染拡大期にも30%程度の稼働率を維持して過去数週間推移している状況。昨年度で年間来訪者数1億2600万人と日本総人口に値する人数が来訪する米国最大の観光立地としてフロリダ州は観光経済を止めない方向性で走るという壮大な実験の半ばという状況だ。
COVID―19と共存せざるを得ない状況では、団体客比率が減り、地元客・近隣客は皆自家用車で来訪する個人旅行客(FIT)比率が上がる米国観光市場型に近づくだろう。こうなると、昭和時代からの旅行代理店団体送客依存、平成時代のOTA代替依存体制から、より米国観光市場型に近い、FITに直接マーケティングしていく令和マーケティング体制への構造的移行速度が加速されるだろう。米国大手ホテルチェーンでは既に総宿泊の50~60%が旅行代理店・OTAを通さない自社直接予約客であり、逆に言うと、COVID―19を機に固定ファン層の顔や属性情報が見えてSNSによる双方向の対話確立がしやすい顧客層を旅館側が自ら開拓・管理できる機会ともいえる。異質であった日本国内市場が世界の潮流に合致していく方向性だが、旅行代理店・OTAはFIT比率が増加する今後いかに付加価値を生み出すのか、ビジネスモデルの再定義が必要となる。
また、短期的には近隣、近距離、同一都道府県内、国内と対象を広げて売り上げを確保する生き残り戦術には必須で、現状規模も一見大きい、日本人観光消費(約23兆円)に依存していても少子化高齢化で中長期的には低成長率なため、昭和時代の残像ビジネスモデルでここに固執しても自社の増収増益基調は確保できない。いったんゼロになって再出発のインバウンド客2.0時代は今までの4分の3を占めた東アジア漢字圏客(近距離ゆえに滞在日数が伸びないゆえに消費単価10万円台前半)以外の欧州・米大陸遠距離客の来日に宿泊産業が各地DMO、輸送業と協力して注力すべきである。RWC2019で平均17日滞在、平均消費単価68万円というセグメントが24万人来訪したという実績を見れば、インバウンド客2.0時代の戦略方向性は明確である。
原准教授