宿を体験空間として活用
2019年の創業以来、顧客体験設計とデジタル技術で地域創生に取り組み、独自の体験Eコマースサービス「cocodake(ココダケ)」の開発・販売を多岐に展開するあめつちデザイン(東京都千代田区)の代表の霜竹弘一氏=写真=に、新サービスの「cocoshiru(ココシル)」の特徴や、今後の活動方針などを聞いた。
――宿泊市場の現状をどう認識しているか。
かつて旅の目的といえば「観光地に出かける」だったが、コロナ禍以降、人と外界が遮断を余儀なくされ、おこもり需要が増した影響で、人々は泊まりたい宿を見つけて出かけるスタイル「宿が目的地になる」という傾向が目立つ。
そのため、地域の玄関口である宿は、本来の宿泊機能を超えて、地域の魅力を伝えるメディアであり、さまざまなモノ・コトが体験できる新たな場に生まれ変わろうとしている。その意味で宿泊市場は今、大きな変革期を迎えていると考える。
――改めて、体験Eコマースサービス「cocodake」の説明や、旅館・ホテルでの導入実績について説明を。
館内のインフォメーション機能を搭載し、客室など館内スペースを地域逸品の体験ショールームとして活用、五感を通して商品を体験し、購入したいと思った瞬間にその場でオンライン購入できるサービス。
岐阜、長野の宿で導入が始まり、現在では全国各地にその輪が広がっている。導入宿からは「これまでお客さまから宿にあるモノについての質問を受けても売ることはできなかったが、販売できるようになったことで、付帯収益が得られるようになった」など支持を得ている。これは弊社サービスの実装により、お客さまに対して購入の出口を作ったことで、宿に「館内のモノが売れる」という実感を持っていただけている証である。今後もサービスの普及促進に努めていきたい。
――4月からリリースしたリサーチサービス「cocoshiru」については。
宿をさまざまなモノ・コトを試すことができる体験空間として活用し、宿泊客から商品やサービスに対するフィードバックを得ることで、企業の商品開発やサービス改善に役立てられる独自のソリューション。最短でも平均滞在時間が15時間、かつ衣食住の全てがそろう宿は、他にはない極上の非日常空間。
その中で宿泊客はリラックスした状態で、五感が刺激されるようなさまざまな体験が可能。すなわち、宿でのリサーチはほとんどバイアスがない状態で実施されるため、より人間の”素”や”本音”の部分が見え、質の高いリサーチ結果を見込める。
幸いにもサービス開発当初から化粧品や、アメニティなどの試作品のリサーチを実施したいと、大手メーカーからの引き合いがあるこれから、サービスを本格的に展開する中で、アメニティなどの「美」に加え、「食」やインテリア、家具を含む「住」、そして車や自転車、電動キックボードといった移動手段の「動」の分野にも注力する。これまでにない業界を超えたさまざまなコラボレーションが生まれてくるともくろんでいる。
――今後の活動方針と、旅館・ホテルへのメッセージを。
和の心、洗練されたおもてなしを体現している宿は、宿泊機能のみならず、多くの可能性を秘めた空間である。大半の宿泊施設は今、人手不足や業務効率化といった課題が山積している。そんな時だからこそ、一度経営理念にしっかりと立ち返り、宿本来の真価を見つめ直してほしい。当社のサービスが施設さまならではの強みや魅力を打ち出す一助となれば幸いに思う。
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あめつちデザイン 本社=東京都千代田区九段南1の5の6 りそな九段ビル5F KSフロア▽事業内容=顧客体験向上コンサルティングによるツーリズムデザイン事業、地方創生体験コマース事業▽連絡先=TEL03(6822)7755。
あめつちデザイン 代表 霜竹弘一氏