国家検定試験「ホテル・マネジメント技能検定試験」を運営する日本宿泊産業マネジメント技能協会(JLM、作古貞義理事長)は9月16日、第7回無料オンライン・マネジメント講座「これからのホテル・旅館に必要となるホスピタリティサービス工学という視点」を実施した。ホテル・旅館専門の総合エンジニアリング会社、タップの代表取締役会長、林悦男氏が講演した。
林会長は「これからの時代は、宿泊施設をいかに効率的に運営していくかを考える『ホテルエンジニア』という職種が求められるようになる。ホテルエンジニアは、IT企業の人材でも、ユーザ企業の情報システム部門の人材でもなく、ユーザ企業の中でITを使って労働生産性を上げていく『IT利活用人材』という位置づけになる」と説明。その上で「観光業界の売り上げの45%を占める宿泊産業の生産性を上げないと観光業全体の生産性も上がらない」と述べ、IT利活用人材の育成の必要性を強調した。
ホテル・旅館におけるサービススタイルの変化と求められるホテルエンジニア像については次のように話した。
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宿泊施設が提供する基本的サービスである「安全」「安心」「清潔」「エコ」「コンビニエンス」の先に「ホスピタリティ」がある。ホスピタリティは、スタッフが個人の力量で臨機応変にサービスを提供する「パーソナルサービス」から、スタッフがサービスマニュアルという統一基準でお客さまへサービスを提供する「ヒューマンサービス」へ、さらにPMS(ホテルシステム)がプラットフォームとなり各単体のテクノロジーをサービスに変換してお客さまへ提供する「テクノロジーサービス」へと変化してきているが、テクノロジーサービスが進めば進むほど、パーソナルサービスの重要性が高まってくる。ヒューマンサービスはテクノロジーサービスで置き換えが可能だが、パーソナルサービスは人間にしか提供できないからだ。
人間とテクノロジーの最適な組み合わせ、つまり「人とテクノロジーの共生」を考えることが「エンジニアリング」の役割。現在行っている「サービス業務」を「ホスピタリティ」と「作業(サービス)」に仕訳けし、作業の方はテクノロジーに代替させることで、人はホスピタリティに集中できる。
ホテルエンジニアには、たまたまや勘ではなく、あくまで理論的、論理的に問題を設定して、技術やITを使って、柔軟な発想に基づいて、さらに効率よく、より良いサービスを造るセンスが必要だ。パーソナルサービス、ヒューマンサービス、テクノロジーサービスのそれぞれを論理的に融合させて、お客さまに効率の良いサービスを提供することが求められる。