リクルートの調査研究機関「じゃらんリサーチセンター(JRC)」は7月30日、リーガロイヤルホテル大阪(大阪市)で関西・北陸エリアを対象とした観光振興セミナー2024を開催した。130人を超える自治体関係者らを前に、「じゃらん観光国内宿泊旅行調査2024」「インバウンド都道府県ポジショニング研究2024」の見方などを、関西・北陸エリアの状況を交えながら解説。JRC研究員らによる国内観光トピックについてのトークセッションも行った。
大野雅矢・旅行Division VicePresident、近畿運輸局の藤原幸嗣観光部長によるあいさつに続き、沢登次彦JRCセンター長が「コロナ禍を乗り越えた地域の未来を拓く『観光戦略』について」と題して、国内・インバウンドに関する観光の状況と、地域誘客視点での持続可能な観光戦略について講演。今後ますます地方誘客が重要になってくる中で「誰が、何を、何のために」の三つの視点の必要性を指摘。それぞれの視点に基づき、「圧倒的な当事者意識による民間のリーダーシップ」「独創性の活用や2次交通網整備など7項目」「観光事業者と地域住民の、生活水準と誇りの向上」について解説した。
次いで森戸香奈子JRC主席研究員は、じゃらん観光国内宿泊旅行調査2024の結果に基づき、日本人の旅行実態について解説。母娘旅行、姉妹旅行ニーズが高まっているとの仮説や若年層が素泊まりスタイルを好んでいる傾向などを紹介。今年度初めて実施した、宿泊先都道府県の顧客ロイヤルティ指標「Net Promoter Score」(NPS)に関する調査や、宿泊旅行目的によって都道府県をタイプ別に分けるクラスター分析についても説明。「『宿+温泉+α』クラスターは隣接県も多く差別化が難しいのでは。関西はクラスターにばらつきがあるため、各県を周遊するのも面白いかもしれない」などと分析の活用例を示した。
インバウンド都道府県ポジショニング研究2024については、松本百加里研究員が都道府県ごとのエリア特性と主要周遊ルートについて解説したほか、インバウンドマーケティングデータを活用した事例を共有。周遊ルートについては台湾市場、米国市場を例に、関西・北陸の各県が「全国主要周遊ルートに入っているかどうか」「周遊ルートから日帰りで足を伸ばせるか」「地方空港を中心としたルートに入っているか」の観点で各県の分析事例を説明したほか、「Hokuriku Arch Pass」「Kansai WIDE Area Excursion Pass」の活用方法やルート検討支援の方策を提案した。
研究発表後には、沢登氏、松本氏、森戸氏、髙橋佑司・地域創造部部長らによるQ&Aセッションを実施。「高付加価値化」「2次交通」「DMOの財源確保」「他地域との連携」などのキーワードについて、先行事例や持論を披露。このうちDMOの財源確保に関しては旅行業の事業収入や入湯税などの活用事例と共に、宿泊税の導入が議題に。高橋氏は「宿泊税を何に使うかが大事だ」と指摘。沢登氏は熱海市を例に挙げ、「使途をDMOの理事会で決められるとした点が素晴らしい。年間7億円の財源を安定的に得られて、自分たちの計画で活用できる。これは自治体にとっても地元にとっても旅行者にとっても『三方良し』だ」とした。
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