アフターコロナの旅ナカ市場 KKdayグループ日本支社長 大淵公晴氏に聞く


大淵支社長

ニーズを国際基準DXで支援 適正な価格設定で集客強化を

 ――改めて、KKdayグループについて伺いたい。

 「KKdayグループは、2014年に設立。戦略として、インバウンド、アウトバウンド、ドメスティック(国内)の3方向で展開している。弊社の魅力は、アジアを中心に12拠点を有し、グローバルで勝負できること。コロナ禍では各拠点が国内商材に集中したが、結果的にコアファンだけでない国内の利用者が増え、アフターコロナでアウトバウンドも含めた大きなスケール感での展開に、つながることとなった」

 ――アクティビティジャパンの創業者でもある。

 「私のバックボーンは、テック、事業畑。ウェブをキーワードに事業の立ち上げを長年しており、日本のマーケットにおいてインバウンドの高まりがあり、東京五輪の決定したタイミングを好機と捉え、14年にアクティビティジャパンを立ち上げた」

 ――日本支社長に就任して約1年となった。

 「アフターコロナでアジア、そして日本のマーケットでナンバー1になれる確信を持って入った。この1年は、コロナ後を見据え、国内商材を増やすほか、DX関連に注力するなど、準備を進めた。就任当初は、結果が見えない日々だったが、夏には国内旅行が動き始め、10月の水際対策の緩和から潮目が一気に変わった。これからが楽しみだ」

 ――22年において、取り扱いをけん引したものは。

 「国内需要が上がる中、アクティビティジャパンの夏休みシーズンに過去最大の数字となった。コロナ禍の閉塞(へいそく)感の反動から、国内外問わずリゾートへの需要が高まっている。このほか、施設系の商品も回復し、22年のグループ連結売上高は過去最高を記録した。最近では、旧正月はコロナ前の250%弱まで数字を伸ばしている」

 ――観光DXでは、オンライン予約システム「rezio(レジオ)」が注目されている。

 「われわれは優秀な技術者200人を抱えるテックカンパニーだ。rezioはグローバルスタンダード型のUI、UXで、多機能、高拡張性を誇る。コロナ禍で入場制限など、来訪者ニーズを把握する必要性が高まり、導入率も高まった。これから国内だけでなく、rezioは急激に再開が始まるインバウンド向けにも展開できる。海外のサイトにも出稿できる仕組みもあることから、問い合わせは日々増えている」

 ――旅ナカ業界全体をどう捉えているか。

 「旅ナカ業界自体は、概念的なところで、旅行の本質だと言える。昔から存在し、商品のバリエーションが増え、初めての方でも体験しやすいマーケットになってきた。移動、宿泊、食事、買い物をして、現地でプラスアルファとして、美術館など施設や、海や山など自然に触れる。コロナで抑制されたものがあればあるほど、より体験をしたいという欲求が強くなっている。業界は成長していくことは必至だ」

 ――業界の課題については。

 「私は、日本の体験領域はもう1回価格を見直す必要があると思っている。今のタイミングでは、円安、原油高、物価高、そして人件費など人の問題がある。安いままだと賃金は上がらず、業界の地位向上にもつながらない。また、海外から見て日本のマージン率は5~10%程度低い。マージンが低いと、海外の日本商品を取り扱う観光事業者の日本離れが進み、インバウンドが一時のものとなることを危惧している。われわれは、商品開発後の販売、そしてプロモーションも実施できる。価格の見直しの中には、そういったマーケティングコストも見込んだ料金設定としてもらえたら、さらに顧客にしっかりと商品情報を届けることができる。われわれも任せられた以上、期待以上の結果を残すよう尽力する」

 ――価格はどこまで上げられるか。

 「試算はできていないが、30%アップなど、ある程度強気でも大丈夫だ」

 ――23年はどのような展開を。

 「KKdayは『飛躍の年』、社内では『アクセルを踏む』という表現をしている。私は社員に、これまでこつこつと準備してきたことを信じてくれ、と言っている。今年は一気に加速する」

 ――重点項目は。

 「国内での認知度を高めたい。東アジア圏では認知度は高いが、国内ではまだまだ。KKdayに行けば楽しいものがいっぱいあり、便利であることを日本の中で浸透させる」

 ――体験以外の販売展開は。

 「旅ナカという領域の中で、お客さまと接触できるタイミングは多々ある。そこにアプローチできれば、アップセルできる。宿泊の販売は一部で開始しており、海外では飲食を展開する地域もある。ポートフォリオの拡大は、研究、分析をしながら検討していく」

 ――中長期について。

 「グループで掲げるものとして、25年には日本の観光アクティビティ業界において、インバウンド、アウトバウンド、国内を合わせてナンバー1となることを目指している。今後は大阪・関西万博が控えるなど、キーワード的にも重なるものは多く、一気に成長できるはずだ」

おおぶち・こうせい=2008年に大手モバイルコンテンツ関連企業に入社し、幅広い業種の新規サービス、事業立ち上げに従事。14年にアクティビティジャパンを設立。18年には17LIVEでCBOとして成長に貢献した。22年3月から現職。

【聞き手・長木利通】

 
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