インバウンド客の地方誘客に向けて 日本政府観光局(JNTO)理事 中山理映子 


日本政府観光局(JNTO)理事 中山理映子

ターゲット選定と戦略的なアプローチが鍵

 本格的なインバウンド観光再開以降、訪日者数は回復基調が続いており、今年に入ってからは2019年を上回る水準で推移しています。また、日本国内の物価上昇に円安もあってか、インバウンド消費も旺盛です。そのような中、残された大きな課題は地方誘客です。23年は訪日客数全体の、19年比の回復率が8割程度にとどまる中、東京都の外国人延べ宿泊者数は同146%を記録しました。都市部に訪日客が集中する一方、地域への還元が乏しいままでは、インバウンド観光の持続可能性にも疑問符がつきます。

 幸い、海外から日本の地方部に足を伸ばしてみたいと考える旅行者は少なくありません。JNTOの「VJ重点市場基礎調査」によれば、訪日時の地方エリア訪問希望率は、リピーターの多い東アジア市場では8割以上に上り、初訪日者の多い欧米豪市場でも6割前後となっています。また、最近も海外の旅行メディアなどで、みちのく潮風トレイル、山口市、北海道、熊野古道といった地域が取り上げられるなど、地方部への関心の広がりが感じられます。

 では、このような地方部への「訪問希望」や「関心」が実際の訪問に至るには何が必要なのでしょうか。まずは「その土地ならではの〇〇」があること。前述の調査によれば、その「〇〇」は市場によって相違が見られ、例えば、台湾であれば飲食、香港であれば温泉、フランスであれば文化が「〇〇」の筆頭に上がります。また、台湾や香港では「家族全員が楽しめること」が、フランスでは「多くの人が訪れていない目的地」が重要視されています。

 初めてフランスを旅行する日本人の多くがパリを訪れますが、その他の地方への訪問となると、ワイン好きならボルドー、古城好きならロワールなど、「その土地ならではの〇〇」に強い関心を持つ人か、二度目三度目のフランス旅行者が中心となるのではないでしょうか。同様に、初訪日者の多くは迷わず東京や京都を訪問するでしょうが、地方部への誘客となると、「その土地ならではの〇〇」に関心を持つ旅行者や、訪日リピーターをターゲットに戦略的にアプローチしていくことが求められます。JNTOでは、前述の「VJ重点市場基礎調査」のほか、昨年公表した「訪日マーケティング戦略」において、地方誘客に親和性のあるターゲットに関するデータの提供や、そのターゲットに有効と考えられるプロモーション手法の提案を行っていますので、ぜひ、ご参考にしていただければと思います。

 

 
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