2023年のインバウンドは、コロナ禍からV字回復を遂げた。訪日外国人旅行者数は、19年比21.4%減の2507万人で、コロナ前の水準の約8割を回復した。国の訪日旅行促進の重点市場23カ国・地域では、中国の回復が遅れているが、8カ国・地域が年間で過去最高を記録した。訪日外国人旅行消費額も19年比9.9%増の5兆2923億円となり、円安や物価高の影響はあるが、過去最高を記録した。
訪日客数
訪日外国人旅行者数は、19年に3188万人と過去最高を記録したが、コロナ禍を受けて20年412万人、21年25万人、22年383万人に減少した。水際措置が22年10月に大幅緩和、23年4月に撤廃されると、国際線の復便・増便が進み、急速に回復した。
コロナ明けにもかかわらず、年間値が過去最高を記録したのは、米国、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナム、カナダ、メキシコ、中東地域。北米や東南アジアが訪日旅行の回復で先行した。特に訪日市場として5番目の米国は、円安ドル高や航空路線の回復で19年比18.7%増の205万人となった。
コロナ前の最大の訪日市場だった中国は、19年比74.7%減の243万人。23年8月まで日本行きの団体旅行・パックツアー商品の販売禁止措置が継続されたことに加え、ALPS処理水の海洋放出が旅行機運に影響したとみられ、回復が遅れている。中国は23年12月の訪日客数でも19年同月比56.0%減の31万人にとどまった。
中国を除く東アジア3市場は、韓国が696万人で、日韓関係の悪化で訪日旅行控えが起きていた19年との比較では24.6%増だが、18年と比較すると7.7%減となった。台湾は19年比14.1%減の420万人、香港は同7.7%減の211万人だった。
東アジアは、中国を除いて堅調に回復しているが、北米や東南アジアに比べると、コロナ禍からの国際的な往来の再開が遅かったこともあり、コロナ前の水準には達していない。中国を含めた東アジアは、コロナ前には地方部における外国人宿泊者数の多数を占めており、訪日客数の回復の遅れが、外国人宿泊者数の地方部と大都市圏の回復状況の差につながっているとみられる。
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