自然環境の保全と観光活用を両立させるエコツーリズム推進法案が20日の参院本会議で成立した。議員立法で今国会に提出され、衆参ともに全会一致で可決された。施行は来年4月1日。エコツーリズムを推進する市町村は、国の認定を受ければ、動植物の生息地などの指定区域への立ち入りを制限できるようになる。同法成立を受けて環境省と国土交通省は、地域の認定などに関する要件を定めた基本方針の作成に入る。
法の基本理念は、(1)自然環境への配慮(2)観光振興への寄与(3)地域振興への寄与(4)環境教育への活用──。自然との触れ合いや環境問題に関心が高まる中、エコツーリズムは地域活性化、環境学習などの観点でも注目を集めるが、観光利用に伴う自然環境への悪影響が懸念され、地域での保全と活用のルールづくりが課題となっていた。
エコツーリズムを推進しようとする市町村は、観光事業者や有識者、地域住民などで構成する「推進協議会」を設置し、エコツアーの対象となる自然観光資源や区域、実施方法を定めた「全体構想」を策定、国の認定を受ける必要がある。
自然観光資源には、動植物の生息地などのほか、自然環境と密接な関連がある風俗慣習、伝統文化などの観光資源が含まれる。
市町村長は、認定を受けた全体構想に則って、観光利用などで損なわれる懸念がある自然観光資源を「特定自然観光資源」として指定し、その所在区域への立ち入りを制限することができる。
特定自然観光資源を汚染、破壊したり、立ち入り制限に従わない場合、30万円以下の罰金が科せられる。全体構想に応じて市町村が制定する条例に違反した場合も、30万円以下の罰金を科すことができる。
同法の主務大臣は、環境、国土交通、文部科学、農林水産の各省にまたがるが、エコツーリズムの推進に関する基本方針は、環境省と国土交通省が策定し、閣議決定を受ける。基本方針は、エコツーリズムの実施状況をふまえておおむね5年ごとに見直す。