クラブツーリズム 代表取締役社長 酒井 博氏に聞く


酒井社長

国内旅行復活、量販拡大に重点

 ――2021年度はどのような年だったか。

 「20年度と同様に大変厳しい年だった。上期は緊急事態宣言で旅行販売がほとんどできず、下期はツアーを催行したものの、まん延防止等重点措置の影響が色濃く反映し、販売高の伸びにつながらなかった」

 ――ツアーの多くが催行できなかった。

 「主に一般団体、自治体営業を手掛けている会社は、BPO事業など非旅行業にかじをきるなど、マルチな活躍ができていた。一方、募集型企画旅行1本できたわれわれには厳しい時間となったが、事業を見直す契機ともなった」

 ――コロナ禍の影響をどう受け止めているか。

 「ワクチンの接種が進み、感染状況が徐々に落ち着きを見せ始めている。18年比でいえば、上期で約6割まで戻ってきた。特にテーマ型旅行は、7~9月では18年同期比を超えている。確実に需要は戻ってきている」

 ――好調なエリアは。

 「九州、北海道、北陸辺りは伸びている」

 ――昨年度で評価できる事業、企画は。

 「前年度から、地域共創事業や新・クラブ1000事業、顧客参画型の事業を始め、どれも順調に歩みを進めている。特に地域共創事業では、全国で25人が出向し、出向先からも良い評価を得ている。出向者の中には、海外旅行に携わっていた社員もいたが、皆がどこでも同化できることが分かった。会社のDNAが浸透していることが再認識させられ、自信となった。これまではBtoC一本やりだったが、初めて取り組むBtoBでも一定の実績を残したことは評価したい」

 ――KNT―CTパートナーズ会(KCP)が発足し、3年たった。

 「コロナ禍で全国のイベントが中止となる中、知恵と工夫で『函館五稜郭スカイランタン』などのイベントを開催できたことは評価できる。だが、実際はリレーションを約2年の間取れておらず、物理的なもの以上に心の距離もできてしまった。今後は、双方の強みを生かし、足りない部分を補完しながら距離を埋めていく」

 ――関係強化で取り組んでいることは。

 「まずは、お客さまを一人でも多く全国の観光地へご案内すること。コロナ禍からの回復に向けては、ゼロベースでスタートしており、旅館・ホテルには泊まっていただくこと、運輸機関には利用してもらうことを愚直に取り組んでいる。ここ10年は、テーマ型旅行を中心とした多品種少量販売にシフトし、商品の高付加価値化を強化してきた。この先、需要回復期では、大量集客商品にも力を入れ、質とともに量にもこだわった経営をしていく。テーマ旅行の強みを知るわれわれだからこそできる、ただの廉価型でない量販の再構築だ。テーマ旅行と量販を比例する形で伸ばしていく。量を追うことは、この2年間、われわれと共に辛酸をなめてきた全国のKCPの皆さまの活力にもなると信じている」

 ――現在のクラブツーリズムのグループ全体の役割は。

 「KNT―CTホールディングスから多額の出資をしていただいているが、これは裏を返せば、旅行需要が本格化した際には、クラブツーリズムがしっかりと稼ぐことを期待されている。今は復活期にあるが、回復に連れて、会社、KCPに貢献することが役割だと認識している」

 ――中期経営計画は2年目を迎えた。

 「22年度が肝であり、黒字化することが命題。海外旅行はいまだ不透明さが残り、主に国内旅行だけで黒字化を目指すこととなる。これは、クラブツーリズムの新たなチャレンジだ。コロナ禍の2年間では、販管費を約半分までに圧縮し、その効果は確実に出てきている。新・クラブ1000事業では、新たな取り組みとして、昨年10月からサブスクリプションサービス『クラブツーリズムPASS』をローンチした。約半年が経過してコンテンツが充実化し、面白くなってきた。旅行需要が回復するに連れて、700万人いる旅行会員からのPASSへの加入も必ず増え、旅行事業復活の起爆剤となると確信している」

 ――今年度における事業展開、重点施策は。

 「旅行業では、国内旅行復活、そして量的拡大の二つに尽きる。そこに新・クラブ1000事業関連の会員数増、地域共創事業、顧客共創活動の展開拡大が加わる。顧客共創活動では、従来から旅行誌『旅の友』を配布していただいているエコースタッフや添乗をするフェローフレンドリースタッフなど約1万人が参画している。今年度からは、新たに『クラブツーリズムキャスト』と位置付け、さらに動画撮影やモニター参加など、多彩なメニューを追加した。今後は、クラブツーリズムキャストを10万人ぐらいまで伸ばす計画だ。60歳で定年したといっても元気いっぱいな人たちが参画している。地域共創事業などにも大きく寄与することも期待している」

 ――他の募集型企画旅行を手掛ける会社とクラブツーリズムの違いは。

 「テーマ型旅行に強いこと。そして、お客さまとのリレーションの深さが違う。われわれは単なる物売りではない。顧客とのリレーションがあり、距離が近いからこそマーケットインができており、商品に反映できている」

 ――クラブツーリズムとしての中長期計画は。

 「海外旅行は必ず戻ってくる。一方で、コロナ禍で海外が販売できない今だからこそ、国内旅行拡大の契機ともいえる。今よりさらに国内を細分化し、日本を網羅できるようにする。インバウンドに備えた受け入れ環境整備も進め、再訪期には逃すことなく需要を獲得していく。地域共創事業では、近畿日本ツーリストとの共創、協働による事業展開の拡大や出向強化、出向先自治体との連携強化などの関係強化を目指す」

 ――最後に、KCP会員に一言。

 「クラブツーリズムが強みとしている企画力の源泉は、KCP会員の皆さまの知恵や人脈にある。つまりは皆さまがあってのクラブツーリズムであり、この恩を必ずお返しする。単なる安売りでは持続可能な経済の発展は実現しない。地域ならではの素材を生かした本物志向の高い体験で、お客さま、地域の皆さま、当社全てにメリットがある三方よしを実現する。クラブツーリズムには、ニッチでありながら深いテーマを求めるお客さまが大勢いる。世に出ていないような素材も、人によっては光り輝く唯一無二の体験となる。ぜひ検討のテーブルに上げ、磨き上げに協力いただきたい。全国の宿泊施設さま、運輸会社さま、観光施設の皆さま、一体となり、コロナで打撃を受けた観光業界を共に盛り上げて乗り切ってまいりましょう」

酒井社長

【聞き手・長木利通】

 
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