観光地の面的な活性化提案
――23年度の取り組みについてうかがいたい。
「エリアソリューション事業における中期経営計画フェーズ2のテーマ『開発と成長』の内法にて23年度は『共創と加速』を重点テーマとして、グループ内外との共創による事業展開を加速させ、観光地を面で活性化するビジネスの伸展に取り組んだ」
――「観光DX」領域の取り組みは。
「観光DX領域では、事業者向けソリューション分野で取扱額、流通額を拡大する事業成長フェーズへの移行を目指した。マーケットの回復を追い風に、電子チケットの『GFJチケットプラットフォーム』の販売流通額は前年度比約157%となり、過去最高を更新した。訪日外国人向けのアクティビティ事業者の利用が多い予約販売システム『JTB BOKUN』の販売流通額も計画比を超えた」
「3月下旬にはJTBホームページにおける体験、遊びなどの旅ナカ商材の販売強化を目的に、『旅ナカ・レジャーサイト』をリニューアルした。JTBトラベルメンバーとの連携、トラベルポイントの積算・使用などの機能拡充によって利便性を向上させるとともに、JTBホームページにおける『交通・宿泊』と『旅ナカ商材』の相互誘導による流通拡大を進めた」
「セラー向けソリューション分野では、旅行における検索、予約、決済を一元化し、取得データをマーケティングに活用できる『Tourism Platform Gateway』の導入が自治体やDMOで拡大した。地域共創基盤をはじめとしたデータ基盤は、前年度からの利用継続に加え、新規導入も順調に増加した結果、導入数は前年度比約200%で過去最高となった」
「宿泊事業者向けソリューションでは、人手不足やインバウンドの回復を背景に、多言語による情報発信・コミュニケーションツール『Kotozna In―room』の導入客室数がトライアル中も含めると約5万4千室となり、前年度末からほぼ倍増した。PMSと複数のマイクロサービスを連携させる『JTBデータコネクトHUB』については、連携数が順調に増加し、今年度以降は導入件数の拡大に取り組む」
――観光地整備・運営支援領域の取り組みは。
「ふるさと納税では、個人版ふるさと納税の契約自治体における寄付額の最大化に向けた取り組みと、有力な自治体への新規獲得営業の推進に注力した。その結果、総務省の規定変更による上期末の特需と最大需要期である年末需要の着実な取り込みで、寄付額は前年度比約125%となった」
「商事関連では、宿泊施設の客室稼働の回復に伴う需要の増加、商品供給体制の整備により、消耗品販売が好調に推移するとともに、複数の新規開業施設案件の獲得で装備品販売も前期を超える実績となった。工事関連は、補助金制度を活用した設備投資の提案営業で実績につなげた」
――エリア開発領域は。
「エリア開発は、観光地域の持続的な発展に向け、コンテンツ開発やソリューション提供を行う事業領域だ。地域金融機関やデベロッパーなど、多様な協業パートナーとの関係性の構築を通じ、開発候補案件の拡充に注力した。開発中の沖縄北部エリアに加え、他の候補地エリアでも関係性の強化に努めている」
――24年度のエリアソリューション事業に関する市場環境をどう見ているか。
「日本人マーケットは前年度から微減が予測されているが、訪日インバウンドマーケットが前年比130%超と予測されていることから、国内における旅行消費額は引き続き堅調に推移するとみている。関係府省庁から観光地域づくりや人手不足の解消に対するさまざまな支援施策が継続されている中、観光地の面的な活性化に向け、私たちのお客さまである地域・エリアに対し、デジタルを含むハード・ソフト双方における提案、伴走を続けたい」
――24年度の事業展開で重視する取り組みは。
「24年度は『進化と拡大』を重点テーマとし、中期事業計画第2フェーズの最終年度として、第3フェーズ以降の飛躍に向けた各事業における基盤整備の完遂と事業開発の拡充を通じて、持続的な成長の確度を高める1年としたい。重点実施事項は、観光DX領域では、ローンチ済みのソリューションにおける市場のニーズ、変化に即した開発・推進による競争優位性の確立と、観光DX人材育成プログラムなど新たなサービスの開発によるカスタマーサクセスの実現をグループ一体で推進する。観光地整備・運営支援領域では、各事業のビジネスモデル、体制の最適化を進めるとともに、さらなる成長に資する事業開発、領域拡大を強化する。エリア開発領域では、25年の大阪・関西万博において、取り扱い領域の最大化に向けてグループ内外のリソースを結集させたい」
――JTB旅ホ連会員との連携についてはどう考えているか。
「エリアソリューション事業では、エリア全体にお客さまに来ていただく仕組みづくりを宿泊事業者の皆さまと共に進めたい。いつも申し上げることだが、JTB旅ホ連の皆さまは各地域で戦略を進める上での最重要パートナーだ。一方で宿泊事業者のDX化では、個々のソリューションにとどまらず、『JTBデータコネクトHUB』などを核に、各ソリューションの有機的な連携を通じ、生産性向上とお客さま満足度の向上の両立に貢献していきたい」
JTB取締役常務執行役員 エリアソリューション事業本部長 森口浩紀氏