ツーリズムの未来をデザイン 訪日マーケティングの新たな挑戦
――JTBコミュニケーションデザインとはどのような事業を行う会社か。
「広告プロモーションを行っていた『JTBコミュニケーションズ』、MICEを事業としていた『ICSコンベンションデザイン』、人材にスポットを当てて組織・人材開発を手掛けていた『ジェイティービーモチベーションズ』などが2016年4月に統合して設立されたJTBグループの会社だ。さらに18年4月に地域のプロモーション会社を統合して現在の形に至る。法人顧客のコミュニケーション領域で様々な課題に対し、ワンストップでソリューションを提供する事を目指している。事業領域はプロモーションやMICEを中心に幅広く、従業員数は1300人。とりわけツーリズム領域のプロモーションは一定程度の高い評価を得ている。また、MICEでは国際規模の会議、学会、展示会や、企業のミーティングイベントなどを単独で、あるいは、JTBと連携をしながら展開している」
――4月1日付で社長に就いた。就任の抱負を。
「当社の経営理念は『お客さまの想いの先を見据え、コミュニケーションを創造し、グローバルレベルでステークホルダーの皆さまと共創し、持続的な発展を遂げる』というもの。それを踏まえて私の抱負としては、未来に向けて社会的有用性が高い企業を目指し、唯一無二のコミュニケーションをデザインする会社にしていきたい。コミュニケーションの価値は受け手が決める。つまりは、コミュニケーションをデザインするとは、お客さまの本質的ニーズに対して期待を上回るソリューションを提供するということだ」
――24年度事業で力を入れていく取り組みは。
「プロモーションとMICEという二つの領域を更に強化していきたい。特にJTBグループはツーリズム領域における顧客接点を有しているので、人と地域と企業をつなぐプロモーションでの統合的なソリューションを展開する。Web広告、デジタルマーケティングなど専門性を高めることとインバウンドのプロモーションも強化していきたい。MICEについては、企画運営力やホスピタリティに一定程度の信頼を得ている。それをベースにしながら事業領域の拡大を目指す」
また、全国70カ所以上で運営する文化施設や観光施設などを拠点に、中長期的な視点で地域の賑わいを創出していきたい。文化的・芸術的イベントを主催し地域の価値や魅力を高めることと併せて、地域産品販売やエリアプロモーションにも力を入れていきたい。
――インバウンドプロモーションでの展開は。
「インバウンドの誘客を強化したいと考えている観光関係者に提案しているのが、旅マエから旅アトに至るお客さまの行動特性の中でパーソナライズ広告を最適に配信できる『triconcier(トリコンシェル)』というサービスだ。クッキーの規制にとらわれずパーソナライズ広告を配信できる、アクティブIDの技術を持った、『クリムタン』という会社と、アドベリフィケーション領域におけるグローバルリーダーである『IAS』社と当社が組んで、このサービスを実現した。例えば、広告を出しても、ターゲティングが不明確で最適な配信ができないという課題があるが、トリコンシェルは、一歩踏み込んだ細かいターゲットの分析をしたうえで、その細分化されたターゲットに最適なマーケティングを行えるので、お客さまの価値向上につながる可能性が高く、サービス開始発表後、多くの問い合わせをいただいている。」
――特に旅館・ホテルに向けて提案していきたいサービスは何かあるか。
「トリコンシェルも旅館・ホテルの経営課題を解決するサービスの一つだが、一方、サステナビリティの観点で注目されているのが、CO₂の排出量を可視化し、脱炭素を推進していくツールである『CO₂ゼロMICE®』と『CO₂ゼロSTAY®』だ。この仕組みを通して、環境配慮型のMICEや宿泊プランの設定などにつなげていきたい。旅館・ホテルでは、例えば、廃棄物を減らす、あるいは循環させるといったことを考えているので、それと当社のCO₂ゼロシリーズを複合的に組み合わせることによって環境への取り組みをさらに推進できる」
「もう一つは、電力事業にも8年前くらいに参入しており、電力のコスト削減や省力化などを提言できる需給管理チームも社内に抱えている。現在、約250施設の旅館・ホテルで導入されているが、電力のコスト削減によっていろいろな投資への余力を生んでいくはずだ」
――そのほか観光業界の関係者に向けてアピールしたいことは。
「当社は広範な事業領域と多様なソリューションでツーリズム業界の課題解決に貢献したいと考えている。統合的なセールスプロモーション、MICE、人材開発など、ぜひ当社の取り組みにご注目頂きたい」
藤原社長