秋以降の予約、7割が前年の半分以下
GoToトラベルキャンペーンは9割が事業者登録済み
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)の「ウィズコロナ調査研究会」(大木正治座長=全旅連副会長)はこのほど、コロナ下の現状について、組合員旅館・ホテルにアンケート調査を行い、結果を公表した。自館の売り上げは7、8月とも半数を超す施設で前年同月の半分に満たない状況。8月末時点の秋以降の予約は、約7割が前年同期の半分に達していない。Go Toトラベルキャンペーンの事業者登録は約9割が実施。同キャンペーンへの期待の高さがうかがえる。
調査は8月31日から9月17日までの18日間、全旅連組合員旅館・ホテル約1万5千軒を対象にウェブで実施。期限までに1046軒が回答した。
■夏の宿泊実績
今夏の売り上げの前年対比を聞いたところ、7月は50%未満が55.3%と過半数を占め、次いで50%以上70%未満が20.7%、70%以上90%未満が13.0%となった。
8月も50%未満が53.7%と半数以上を占め、50%以上70%未満が19.4%、70%以上90%未満が13.4%と、7月とほぼ変わらない状況だった。
7月の売り上げ状況を施設の客室数別に見ると、前年同月比50%未満は10室以上50室未満が48.8%のところ、100室以上は68.4%に跳ね上がる。8月も10室以上50室未満が44.5%、100室以上が71.3%と、同様の状況だ。客室数が多いほど売り上げの対前年比が低い傾向で、「全体的に需要が弱いことを表していると考えられる」(同研究会)。
■秋以降の宿泊予約状況
8月末時点の9~12月の予約状況を聞いたところ、前年同期比で50%未満が70.7%を占めた。7、8月の売り上げで50%未満が5割台だったことを考えると、先の予約により多くの施設が苦戦している様子がうかがえる。
■雇用状況の変化
「一部従業員(アルバイトを含む)の休業を実施・予定」が41.0%、「変化なし」が27.3%、「全従業員(アルバイトを含む)の休業を実施・予定」が22.1%、「まだ決めていない」が6.1%、「一部従業員(アルバイトを含む)の解雇等を実施・予定」が2.6%。
雇用調整助成金は52.0%が「給付済み」で、以下、「活用の予定なし」が20.6%、「申請済み(未給付)」が14.5%、「活用に向けて検討中」が9.5%。「活用の予定なしとする施設が中小規模で散見される。申請手続きの煩雑さによる断念や、制度そのものの理解ができていない可能性もある。専門家の紹介や勉強会など、分かりやすい情報提供が望まれる」(同)。
■資金調達の状況
政府系金融機関による融資は46.2%、民間金融機関による融資は42.5%がそれぞれ既に活用。活用に向けての検討は政府系で18.4%、民間で17.6%が行っている。
新型コロナ対策の持続化給付金は、78.9%が給付済みだが、9.4%が「活用の予定なし」と回答している。
国税、地方税、厚生年金保険料などの猶予制度は、「猶予許可を取得済み」が22.6%にとどまる。「活用の予定なし」が45.2%と最も多く、「活用に向けて検討中」が26.6%と2番目に多かった。「猶予という制度自体のメリットと現時点のキャッシュポジション等を考慮して、検討している様子がうかがえる」(同)。
■経営の状況
「現状の予約状況を(今後も)許容できる期間」は、「年内いっぱいくらい」が30.2%と最も多かった。次に多いのは「不明」の29.6%。
全旅連が4月に行ったアンケート調査の結果に比べ、許容期間が全体的に伸びているという。「融資、給付金などの資金調達によって、予定が見えてきた可能性が考えられる」(同)。ただ、「不明」の回答割合も増えており、「この夏の営業状況、秋以降の予約状況を確認して、先行きに不安を感じている宿泊施設も増えているようだ」(同)。
■Go Toトラベルキャンペーン
Go Toトラベルキャンペーンで宿泊施設がOTAなどを通さず、顧客から直接予約を受けるには、キャンペーン事務局に事業者登録する必要がある。この登録を行っている施設は89.6%と、およそ9割を占めた。このほか登録の「申請済み(承認待ち)」が5.4%、「活用に向けて検討中」が1.1%。「活用の予定なし」は3.0%だった。
7月22日のGo To開始後の全予約に占めるGo To利用予約の割合は、50%以上が48.4%、50%未満が48.3%と、ほぼ同数になった。「恩恵を受けたところ(エリア、宿泊施設)と受けていないところがはっきり2分化しているように考えられる」(同)。
Go Toの利用割合を施設の客室数別に見ると、50%以上は10室以上50室未満が57.6%なのに対し、100室以上は36.3%にとどまる。「宿泊単価の高いプレミアム系、高級旅館・ホテルの集客が好調となっている」(同)。
全国10ブロック別では、50%以上は東海が70.1%、北陸が60.0%と高い数字。キャンペーンで除外された東京が0%となっている。「感染者数の増加やビジネス需要の消失で大都市圏の集客実績が弱い結果となった」(同)。