コロナ禍からの復活へ 旅館経営者、それぞれの思い


「“足元のキャッシュ”支援継続を」

GoToキャンペーン 期待大きいが注文も

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言が全面的に解除。国内観光の復活へ行政も動き出している。今、全国の旅館経営者は何を思い、何を実践しているのか。先週に続き聞いた。

 ■宿の感染防止対策

 宿泊業界が設定したガイドラインを基本に、“3密”回避など感染防止対策をそれぞれの宿が工夫し実践している。以下は具体例。

 「次亜塩素酸水とオゾンを使ってパブリックスペース、食事どころ、客室などの消毒作業を徹底して行い、安心してお客さまにお越しいただけるよう、対策を講じているところ」

 「お客さまに対してアルコール消毒液の設置、チェックイン時の体温測定、過去2週間の健康確認、フロントでのスクリーンの設置、マスク着用のお願い。施設側では従業員の健康管理(毎日の体温測定等)、館内のアルコール消毒、マスクの着用、室内換気」

 「社員のマスク、手洗い、出社時検温。館内各所にアルコール消毒液設置、フロントカウンターにアクリル板設置。レストランの席数半分、横並び席も設置。個室食プラン販売(部屋に椅子テーブルを搬入し、臨時の個室会食場へ変更)。朝食バイキングを和定食に変更。お客さまに前日電話をし、体調の聞き取り」

 「今まで行っていなかった部屋食対応にし、朝食会場も大宴会場を使うことで3密対策を取っている」

 「3密回避をなるべく行うが、そうすると旅館としての良さ、つまり対面での接客や会話、おもてなしとしての関わりなどがそがれてしまい、日本のサービス品質を下げてしまいそうで、懸念がある。私どもはサービスを売っているので、そこを下げずにどこまでコロナ対策をできるかが勝負と思い、検討している。フロントカウンターでの仕切りのプレートやビニールの幕などは弊社ではやらないことにした。ソーシャルディスタンスを保ちながら、何とかしていこうと思う」

 「業界団体などの指針を基本にやっていく。6月はソーシャルディスタンスで下層階部分を食事会場として、部屋ごとの食事、夕食も仕出し弁当の使い捨て容器に入れて、なるべくお客さまと接しない形式を取る。朝食も同様。浴衣、バスタオル、フェイスタオル、歯ブラシ等もお客さま一人一人の物をビニールに一つにしてチェックイン時に渡す」

■国、自治体、関係団体への要望

 経営を持続するための“足元のキャッシュ”への支援の継続や拡充を求める声が多く挙がっている。

 「緊急事態宣言解除はされたものの、いまだ感染者は出ており、恐らく完全に終息することは難しいのではないかと思っている。現状のままだと『答えのない自粛』が続き、私どもにとって必須の存在である旅行者が世間からたたかれる(良く思われない)状況が長く続いてしまうのではないかと懸念している。宣言解除をしたからには、明確に“この感染者数まで落ちれば大丈夫”のような声明を国または自治体から出し、経済の停滞が少しでも短くなるよう、良い影響を与えていただきたく思っている」

 「今後、ウイズ、またはアフターコロナでは、『安心安全』が、お客さまが宿を選ぶ際に重要な付加価値の一つとなっていくかと思う。安心安全を担保して営業を継続していくには最低限の設備投資が必要。そこへ対する支援をいただければ、運転資金確保に翻弄(ほんろう)している現状から一筋の光が見えてくる。また、各種租税公課のさらなる免除、減免、猶予などで経営環境への少しのゆとりを与えていただきたく思っている」

 「いろいろな融資制度を設けていただいて、本当に助かった。しかしながら将来的に返済できるかが大きな不安。コロナ後に永久劣後債や大幅なリスケジュールなどの制度を作っていただかないと、将来的に破綻するかもしれない。ちまたでいわれているように、各種助成金、補助金の申請書類が複雑な上、手書きが多いので、これを機にシンプルかつオンライン化していただけるとうれしい」

 「持続化給付金200万円は、小規模は助かっても、中堅以上にはあまりに小さな金額だった。中小企業をひとくくりにする施策はいかがなものかと。金融機関の対コロナ運転資金はいずれも5年据え置き。最終的には5年後にどう“ツケ”を払うかにかかってきそうだ。運転資金のメザニン化ができれば安心して経営に打ち込める」

 「足元のキャッシュに対する施策を継続的に検討いただきたい。緊急事態宣言が解除されても宿泊業における需要回復は長期化することは避けられないと考えている」

 「ここ2~3年は国内旅行に行くようにと指針を出してほしい。もちろん隣国も厳しい状態だとは思うが、国内ファースト! しっかり国として打ち出してほしい。特に修学旅行は、海外修学旅行は当面の間禁止、必ず国内を打ち出すこと」

■Go To Travelキャンペーンへの期待

 政府が打ち出した国内旅行需要創出キャンペーン。かつてない規模の大型キャンペーンに旅館経営者の期待も大きく、好意的な声が大半だが一部で注文も。観光に詳しい武井俊輔衆院議員(自民党)は、「中小を含めた旅館や地方など、広く効果が行き渡ることが大事。制度の透明性も重要」と指摘する。以下は旅館経営者の声。

 「空前の規模の需要喚起策であり、大変ありがたく思う。宿泊施設への直販についても柔軟に対応していただける方針となり、安心した」

 「大規模な予算と聞いているので大変期待はしている。お客さまが旅行に行くきっかけになるので、大いに利用していただきたいと思う」

 「早急に制度設計をして、事業者への説明を十分にしていただき、事業者が制度をしっかりと把握理解した上でスタートさせていただきたく思っている」

 「エージェントを活用した割引宿泊券ばかりでなく、FIT向けの直接予約でも使用できるような仕組み作りをしてもらいたい」

 「あまり早く発表されると、始まる前の旅行控えが起こるのではと少し心配している。6カ月のキャンペーンは大変ありがたいが、それで終わりではなく、その後も息の長いキャンペーンをお願いしたい」

 「期待はしているが、7月では時期尚早だと思う。旅行ムードには程遠いのと、違和感を持つ国民がまだ多い時期だと思う。何より制度が複雑(30%が地元商品券)なので、チケット印刷や周知に時間をかけなければ現場が苦労するだけになりそう」

 「実際に使われるお金にかなり地域差が出てしまうのではないかと予想している。地方に比べると東京、大阪など在住の方が旅行への需要が元々高い傾向があるので、そういった方々が結局近場でしかお金を使わないのではないかとも懸念がある」

 「これはとても良い制度。半額補助はとても助かる。われわれとしても、コロナで人手や手間が増える分、単価を上げさせていただけるように、全体的にも高単価シフトを促してほしい」

 
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