コロナ禍後のはとバス はとバス社長 武市玲子氏に聞く


はとバス 武市玲子社長

インバウンド対応不可欠 魅力あるコースづくりを

 ――2023年4月1日付就任ですが、はとバスを利用したことは。どんなイメージをお持ちですか。

 「小学生の頃に乗り、都内観光をした記憶があります。歴史と伝統があり、知名度、ブランド力も高く、人々に親しまれていると思います。友人にはとバスの社長に就任した話をすると、必ず『あの黄色いバスね』といわれますからね」

 ――実際に中に入ってみていかがですか。

 「昨年、創業75周年を迎えました。創業精神に『観光事業を通して多くの日本の人々に夢を、外国の人々には平和な日本の姿を紹介する』とありますが、それが今も生きていると思います。アットホームな雰囲気で、社員を大事にする文化も感じますね」

 ――コロナ禍の影響は。

 「就任当初はまだ影響はありましたが、旅行支援の後押しもあり徐々に回復し、コロナ5類移行で弾みがつきました。秋のトップシーズンに東京駅丸の内南口にあるはとバス乗り場に行ったのですが、乗り場がお客さまであふれ、黄色いバスがお客さまを乗せ次々に出発する光景を見た時に、『コロナ禍がひと段落した』ことを実感しました」

 ――インバウンドは。

 「昨年4月から外国人向け郊外コースを、その後都内観光コースも再開するなど、段階的に増やしてきましたが、まだコロナ禍前の実績には及びません」

 「この先、人口減少で日本人の観光客の絶対数は減ってきます。それをカバーするのがインバウンドであり、対応は欠かせません。従来型のコースとは別に、欧州の旅行会社と直接契約し、外客コースの再開とほぼ同じ時期に週3日程度運行のインバウンド向けの貸し切りバスを受注しました」

 ――観光バス業界の人手不足も深刻です。

 「厳しいですね。いま運転手は125人ほどですが、4年前と比べると2割ほど減っています。ガイドも同様。車両数も130台だったのが100台ほどになっています。運転手の方が多いので足りていると思われるでしょうが、安全面等を考えると十分ではありません。募集しても応募が少なく、当分は頭を悩ましそうです。また、4月からは労働時間の制限(24年問題)も関わってくるので、コースの見直しや受注の工夫を行っているところです」

 ――23年度(23年7月1日~24年6月30日)の事業展開は。

 「やはり定期観光バスを主軸とし、事業展開しています。お客さまが関心を示す魅力あるコース(商品)をどれだけ造れるかが大きなポイントです。個人ではなかなか行けないコース、例えば迎賓館赤坂離宮や羽田空港の制限区域内を組み込んだコースや、“推し活”がはやっていますが、リラックマなどを満喫できるコース、鉄道会社等との連携コースも人気です」

 「話題性のある施設をいかにスピーディーにコースに取り入れ、提供するかも必要です。最近では2月1日にオープンした豊洲の『千客万来』を訪れるコースを発売しました。順調に予約が入っています」

 「22年度(第82期)は営業収益118億2600万円、経常利益3億1千万円、当期純利益は1億8800万円となり、経常損益で5期ぶりに黒字化を達成できました。23年度は当然、これを上回る数字を目指します」

 ――はとバスの強みと弱みを挙げるとすれば。

 「強みは自分たちでツアーを企画し、商品化して販売する。自社の車両で運行し、運転手・ガイドも自前。そして車両整備も行う。全てにおいて責任を持つということ。弱みは、ブランド力があることにより甘んじてしまう危険があること。意識して気を引き締めなければと思います」

 ――心がけていることはありますか。

 「毎日の生活や仕事は同じことの繰り返しが多く流されやすいのですが、感度を失わないように新鮮な気持ちで迎えるようにしています」

 ――ご趣味は。

 「気分転換を兼ねたフラダンスで、月2回ほど地元の教室に通っています。仕事と家庭以外の自分の時間を持ちたいと思ったのがきっかけです。フラフラと力を入れないでやっています(笑い)。仲間もでき、とても楽しいですよ」

 

たけいち・れいこ 一橋大卒、1986年東京都入都。人事委員会事務局長、生活文化局長などを経て、2022年4月交通局長就任。23年3月退職し、4月はとバス社長就任。東京都豊島区出身、61歳。
【聞き手・内井高弘】

 
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