サステナブルな提案を強化 JTB取締役兼専務執行役員 ビジネスソリューション事業本部長 大塚雅樹氏に聞く


JTB取締役兼専務執行役員 ビジネスソリューション事業本部長 大塚雅樹氏

宿は販売促進のメディアだ

 ――ビジネスソリューション事業とは。

 「ABM(アカウントベースドマーケティング)戦略によりグローバル企業や日系企業を軸にさまざまな課題にフォーカスして、人流、非人流を組み合わせた幅広いソリューションを販売する事業だ」

 ――23年度の取り組みとその実績は。

 「コロナの影響があり企業の報奨旅行やイベント、周年事業は止まってしまった。当社のノウハウを活用し、行政のワクチン接種業務といったBPOで補った。23年度のBPOは、前年度から落ち込んだものの、旅行事業が87%増、ミーティングイベントが大きく伸びたためその落ち込みを補うことができた。コロナ感染症が昨年5月に5類に移行して以降、お客さまの人流活動が非常に増え、コロナ前の19年の実績にも近づいてきた」

 ――24年度、ビジネスソリューション市場の見通しは。

 「担当しているクライアント企業のうちグローバル企業では、円安という状況もあって世界中の責任者を集めた会議を日本で開催する案件が昨年末から非常に増えてきた。また、コロナ禍で周年事業ができなかった企業が、周年行事として昨年の後半から企画を始め、24年度に実施するケースが多くなっている。また、人流がある場所でサンプリングをしたり、新商品の体験イベントを実施したりするなど私たちが力を入れている『旅メディア』としての販売促進活動のオーダーが非常に増えてきたのも特徴だ」

 ――活発化してきた市場に向けて、どういった取り組みを行っていくのか。

 「一番のポイントは、旅行事業を核にミーティングやイベントをしっかり伸ばしていくということ。ビジネスソリューション事業を担当する11事業部のほかに、グループ会社のJTBビジネストラベルソリューションズが出張に関する事業を行っており、サステナブルな出張の提案に力を入れている。例えば、通常よりも料金が少し高くなるが、この飛行機に乗ってこのホテルに泊まるとこれぐらいCO2が削減できるという提案だ。サステナビリティレポートを出している会社では、こうした出張を行っていることをサステナビリティレポートに掲載できるというメリットがある。また、ホテルやイベント会場でイベントを実施する際に、搬入、搬出で電気を大量に使い、リサイクルできないツールで舞台を作ったりするため、JTBコミュニケーションデザインではお客さまの要望に寄り添い、サステナビリティに合う形でのイベントを提案している。こうした専門性の高いグループ会社を保有しているので、今年度は、クライアント企業に対して、私たちの提案する内容がサステナビリティに資する取り組みであることを伝えていく元年にしたい」

 ――サステナビリティを意識したイベントなどのニーズは増えているのか。

「かなり増えている。例えば、外資系の製薬会社では、ドクターを集めての学術講演会などを頻繁に行うのだが、どのぐらいサステナビリティに準拠しているかということを世界基準の指標を用いて示していかないと提案書を受け取ってもらえない。そのぐらい厳しくなってきている。その指標に国内企業も追随しており、サステナビリティは外せない状況に今後なっていく」

 ――団体旅行販売にはどう取り組んでいく。

「コロナ前のように何百人、何千人が旅館で大宴会をするというスタイルはほぼなくなってきている。企業が30人、50人、多くても100人ほどのグループで温泉に行き、昼間にディスカッションをし、夜に宴会を行うというのが今年のムーブメントではないか。今年度は、そのニーズに対応していく」

 ――能登半島地震の被災地への支援は。

 「流通に適さないために捨てられていた野菜をホテルのシェフに加工してもらい、カレーなどの缶詰にした『ロス旅缶』というものを作った。直接支援として、このロス旅缶2千個を能登の被災地に送らせていただいた。間接的には復旧作業のために通信インフラ会社やガス会社などの方がたくさん現地に行っているので、その方々が円滑に行って帰って来ることができる仕組みを企業に提供している」

 「クライアント企業から若手社員らに能登でボランティアをさせたいという問い合わせをいただいている。今は多くのボランティアが来ても、現地ではハンドリングができない状態なのでストップがかかっている。自治体からの要請があればすぐに始めることができる状態にしている」

 ――旅ホ連と連携した取り組みはあるか。

 「企業が単純にチームビルディングなどの研修をしてもインプットが弱いが、観光地に行って自然の中で研修をすると極めて効果が高い。それはクライアント企業の皆さんも認識している。夜の宴会でも社員同士のコミュニケーションが通常よりも深まる。いわゆる転地効果だ。そういった研修は週末には実施しないので宿泊施設の平日稼働に役立つ。これを旅ホ連の皆さんと一緒に取り組んでいきたい」

 「宿泊施設を貸し切りにし、ロビーから駐車場まで施設全体を企業のブランドに染め、そこにVIPを招待して楽しんでもらうというプロモーション企画を国内外のクライアント企業に提案している。旅先の空間をメディアにすることを私たちは『旅メディア』と呼んでいる。旅館・ホテルの皆さまには部屋や浴室などが販売促進のメディアになることを伝えていきたい」

JTB取締役兼専務執行役員 ビジネスソリューション事業本部長 大塚雅樹氏

 

 
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