スキマバイトサービス「タイミー」が提供する新しい働き方 タイミー事業開発部 山田大貴氏・タイミー地方創生部 葛西伸也氏に聞く


タイミー 事業戦略本部 事業開発部 グループマネージャー 山田大貴氏(左)、タイミー PA部 地方創生G マネージャー 葛西伸也氏(右)

一人ひとりの時間を豊かに

 従来の求人サイトでも派遣でもない、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトサービス「タイミー」を提供するタイミー(東京都港区)。サービス提供開始からわずか5年でワーカー数は500万人を超え、導入事業者数は約4万6千社に及ぶなど、スキマバイトに関する労働者、事業者のニーズに広く応え続けている。同社は登録ワーカーと宿泊施設とのマッチングにも注力している。タイミーの特徴や強みなどを事業戦略本部事業開発部グループマネージャーの山田大貴氏に聞き、同サービスが選ばれ続けている理由を探った。また、同社が展開する、地方での「働く」体験を通じて第二の故郷を見つけられるサービス「タイミートラベル」についても、PA部地方創生Gマネージャーの葛西伸也氏に聞いた。【聞き手・kankokeizai.com 編集長 江口英一】

 

宿泊施設での業務にも対応 長期雇用、引き抜きも可能

タイミー 事業戦略本部 事業開発部 グループマネージャー 山田大貴氏

 

 ――タイミーが提供するスキマバイト紹介とはどのようなサービスですか。

 山田 事業者(企業)側が「働いてほしい時間」とワーカー(働き手)側が「働きたい時間」とをマッチングするスキマバイト(=スキマ時間アルバイト)サービスになります。従来型の人材派遣サービスやアルバイトの場合、求人が出て、採用面接があって、そこで合格した方が一定期間後に働けるようになるという形でした。タイミーの場合、アプリを通じて事業者とワーカーのマッチングが瞬時に完了します。事業者側が働いてほしい時間の求人を出し、それにワーカー側が申し込み、マッチングが完了すれば、その日からでも働くことができます(右下図1、左下図2参照)。ワーカーへの給料は、タイミーが立て替えて即日支払いをいたします。事業者からタイミーへのお支払いは月締めの一括払いです。

 2023年6月時点で、登録ワーカー数は500万人を、登録事業者4万6千社を、それぞれ突破しました。登録ワーカー数は、2019年に73万人でしたから、約6.8倍になっています。また登録事業者数は、同年に約1700事業者でしたから、約27倍になっています。登録事業所数で申し上げると、同8千拠点から13万拠点となっており、約16倍です。

図1 タイミーの使い方

図2 タイミーの特徴

 

 ――世の中の人手不足を背景に、特に飲食業界での利用企業が急増しているようですね。業態が飲食に近い宿泊業界の利用状況はいかがでしょうか。

 山田 コロナ禍で飲食業の人手が余剰になり、タイミーで掲載いただく求人の多くが物流業に移っていましたが、緊急事態宣言の解除後は飲食需要も戻り、飲食業界での利用が急回復しています。数字で申し上げますと、飲食業の比率は、19年7月は全体の57.5%だったのですが、20年7月に9.6%、21年7月に9.3%と落ち込み、22年7月に22.5%まで回復。23年7月では28.7%まで回復しました。

 旅館・ホテルでのご利用は今、全国ほとんどのエリアで拡大しています。求人ベースでみると、昨年同月比の4~9倍です。沖縄で3.7倍、北海道で同4.4倍、福岡で8.4倍、京都で同9倍といった具合です。

 

 ――宿泊業界(旅館・ホテル)では、若い人材も求められていますが、少し落ち着いた年齢層の人材も歓迎されます。登録者の性別、年代などはどうなっていますか。

 山田 年代、職業を問わず、幅広い属性のワーカーにご利用いただいています。登録ワーカーの内訳ですが、性別は男女が約半々。年代別では、10代7.5%、20代33.3%、30代24.3%、40代21.8%、50代12.0%、60代以上1.1%となっており、30~60代が全体の6割になります。

 私自身は30代なのですが、30代ですと副業への抵抗感がある方は少ないように思います。しかし、子育て世代の方々が副業でタイミーを活用しているケースも少なくありません。

 スキマバイトというと若い方々のものというイメージがあるかもしれませんが、実際はあらゆる年代の方々がワーカーとなっており、全国の宿泊事業者の皆さまのそれぞれのご希望に応じたワーカーをご紹介できる体制を整えております。宿泊業界はタイミーの最重要ターゲットの一つとなっておりまして、最近、専門の営業チームを編成いたしました。同じ宿泊施設でも、ホテルは機能分化が進んでいますが、旅館はマルチタスクを求められるケースが多いですから、タイミーといたしましても、細かいご要望にお応えできる仕組みを構築中です。

 

タイミーのワーカー属性。年代、職業を問わず、幅広い層が利用している

 

 ――せっかくスキマバイトをお願いしても、実際に働きに来て下さった方が接客・サービス業にあまり向いていないタイプの方だったり、ドタキャン(当日に来ない)などがあったりすると困ります。タイミーのマッチングシステムでは人材の質をどのように担保されていますか。

 山田 当社のマッチングシステムは、事業者側にもワーカー側にも安心して便利にお使いいただけるようになっています。

 事業者側は、求人に当たってPCの管理画面からマッチング条件、つまり働いていただく上で必要なスキルや条件を任意で設定していただきます。例えば、「英語」「中国語」「体力」「元気」「笑顔」「はきはき」「コミュニケーション力」「接客」「キッチン」「ドリンク・バーカウンター」「洗い場」「バッシング・清掃」などから選べます。ワーカー情報も事前に確認できます。確認可能な項目は「氏名」「顔写真」「電話番号」「働いた回数」「働いた合計時間」「ペナルティポイント」「キャンセル率」「店舗からのレビュー評価」などです。確定した求人を直前キャンセルしたワーカーにはペナルティポイントが発生し、8ポイントに達すると一時利用停止、無断欠勤は無期限利用停止となります。

 優良ワーカーの獲得のために、「グループ管理」機能もご提供しています。働きに来て下さったワーカーの中から、もう一度働いてほしいと思った方を「お気に入りグループ」に追加したり、スキルや特性に合わせて作成したグループに振り分けることができます。次回募集時にはグループごとに求人を出すことができます。このグループ管理機能をご活用いただくと、即戦力ワーカーを呼ぶことができますので、教育コストの削減につながります。また同一企業内であればグループの共有が可能なので、近隣店舗・宿泊施設へのヘルプ依頼も簡単にできます。

 働きに来て下さったワーカーの中からお互いの長期雇用を希望した方を引き抜くことも可能です。その際、タイミーへの報告義務、紹介料は一切必要ありません。長期アルバイトだけでなく、社員になった方も実際にいらっしゃいます。登録ワーカーを対象に行った調査では、53%のワーカーが「タイミーで働きやすい職場に出会えたら、長期雇用で働いても良い」と回答しています。

 

 ――引き抜きOKとは随分と太っ腹ですね(笑い)。

 山田 登録ワーカー数は増え続けていますし、タイミーのマッチングで、事業者とワーカーに良いご縁ができるのはむしろ喜ばしいことと考えています。タイミーの信用力、ブランド力の向上にもつながっていくわけですから。

 

 ――ワーカーへの支払いは即日ということですが、タイミーがいったん立て替え払いをするということでしょうか。

 山田 その通りです。ワーカーに支払う給与は、タイミーが一時立て替え払いします。事業者には月の利用分を一括でタイミーにお支払いいただきます。

そして、タイミーは完全成果報酬型です。初期費用、月額費用、掲載費用は一切かかりません。システム手数料として、日当報酬の30%を頂いています。手数料はワーカーが実際に働いた時間分のみ発生します。

 

 ――ワーカー側がタイミーを使うメリットは何でしょうか。

  山田 従来、アルバイトを始めて給料をもらうまでの流れは「仕事探し」「応募」「履歴書・面接」「シフト提出」「勤務」「給料日」というものでした。これが、タイミーのスキマバイトでは「仕事探し」「申し込み」「勤務・給料日」で完結します。ワーカーは、スマホにアプリをダウンロードしてから、自分の情報を登録し、働いてみたい仕事を探します。先着順で申し込みと同時に仕事が決定。働き終わったら即入金でアルバイト代がもらえる仕組みです。シフトという概念がないので、ワーカーは自分の都合を優先して好きな時間に働くことができます。これは、今までになかった新しい働き方ではないでしょうか。

 

 

自治体や各地の事業者と連携 「働く」体験通じ関係人口創出へ

タイミー PA部 地方創生G マネージャー 葛西伸也氏

 

 ――タイミートラベルとはどのようなサービスですか。

 葛西 地方で「働く」体験を通じて第二の故郷を見つけられるサービスです。「タイミーワーカーに第二の故郷を提供する」をミッションに掲げています。目的は、社会貢献とタイミーの利用価値向上です。タイミートラベルでは、地域の仕事体験、地域の観光体験、地域住民との交流体験を実現しています。

 

 ――スキマバイトサービス「タイミー」と「タイミートラベル」との違いを教えて下さい。

 葛西 タイミーはスキマ時間を活用してアルバイトをしたい方向けのサービスで、タイミートラベルは第二の故郷を見つけたい方向けのサービスです。対象は両方とも全国500万人のタイミーワーカーです。タイミーの展開エリアは全国47都道府県で応募エリアはその周辺地域ですが、タイミートラベルの展開エリアは自治体と連携した地域のみで応募エリアは首都圏、近畿圏などの都市部です。事業者様に直接雇用していただくことに変わりはないのですが、タイミーで頂いている手数料30%は、タイミートラベルでは0%、つまり頂いておりません。

 

 ――タイミートラベルは、具体的にはどのような仕組みですか。

 葛西 自治体、観光地、地域住民と連携して事業者の方々にタイミーワーカーを受け入れていただきます。2~7日程度滞在していただき、労働力の提供、観光、地域住民との交流を行っていただきます。

 

 ――今年8月に山形県と業務委託契約を締結されましたね。

 葛西 温泉旅館やワイナリーなど山形県ならではの地域産業での就業機会を、タイミートラベルを通じて提供していきます。対象は上山市、西川町、酒田市、最上町、小国町の五つの市町。移住検討の際に大きな課題となる「仕事」への機会を設けることで山形県の魅力を体感してもらい、関係人口の創出や将来的な移住促進を目指しています。参加者の滞在中には受け入れ先の事業者はもちろん、各市町のコーディネーターや移住者との交流機会を設け、地域の魅力や暮らしのイメージをお伝えします。

 

 ――就業受け入れ予定施設を具体的に教えていただけますか。

 葛西 例えば、旅館ですと月山志津温泉「変若水の湯つたや」と赤倉温泉「わらべ唄の宿 湯の原」です。客室清掃や配膳などの業務を行っていただきます。「月山トラヤワイナリー」では、ぶどうの収穫作業やワインの仕込み作業、ワインの瓶詰作業などの業務を行っていただきます。

 

 ――山形県に先駆けて、今年3月に岐阜県下呂市と業務提携に関する協定も締結されましたよね。

 葛西 下呂市との協定は、タイミートラベルではなく、タイミーとして締結させていただきました。スキマバイトサービス「タイミー」を通じて、下呂市内や近隣市町村などの働き手を確保し、人手不足解消に取り組むという内容です。下呂市のご協力の下、人手不足に悩む事業者に対して説明会を行い、タイミーを利用しやすい体制を整え、タイミー上で働き手を募集しています。農業での活用を皮切りに、観光、介護・医療、林業での活用に向けて取り組んでいます。

 “日本三名泉”で有名な下呂温泉を持つ観光地として知られる下呂市は、観光業だけでなく、自然環境を生かした農業も盛んです。ただ昨今、労働人口の減少が課題となっています。市内や近隣主町村の潜在労働力を喚起することを目的として今回の協定を締結させていただきました。スキマバイトの働き手が人手不足解消の一助となることを願っています。

 スキマバイトサービスの概念は、都市部では浸透してきていますが、地方部ではまだまだです。行政の方々のバックアップをいただくことで、人材不足解消につながるタイミーのサービスを、観光業界をはじめとするより多くの方々に知っていただき、活用していただけるようになればと思っています。

 

 

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