タイムアウト東京は12日、地域で愛される店を讃える「Time Out Love Local Awards 2022」を発表した。
受賞店舗発表の記事「東京のベストを決めるアワード、受賞店舗が決定」
https://www.timeout.jp/tokyo/ja/things-to-do/time-out-love-local-awards-tokyo-winner-2022
「Time Out Love Local Awards」は、コロナ禍にも関わらず、都市で生活する人のために努力を惜しまない店や地域で愛される店を讃えるアワードです。2021年12月にロンドンのほか、ニューヨークやシカゴ、バルセロナ、パリ、リスボンなど5カ国12都市で実施されました。
初の開催となった東京では、レストラン・カフェ・バー・ショップ・クラブ・アトラクション(文化施設)の6つの部門に対して、読者からノミネートを募りました。結果、225店が推薦を受けてノミネート。タイムアウト東京編集部が各部門6店舗を選考した上で、読者による最終投票を実施しました。そして、この度、アワード受賞店舗が決定しました。受賞店舗には特典として、トロフィーの授与が行われる他、5月中旬から各店舗よるタイムアウト東京インスタグラムの1日ジャックを開始。また、受賞者インタビューも同時に公開されます。
受賞店舗のノミネートと最終選考について
・ノミネート対象店:東京都内にあるレストラン・カフェ・バー・ショップ・クラブ・アトラクション(文化施設)に該当する店舗。※チェーン店(10店舗以上の展開)は除く。
・ノミネート方法:読者推薦によるノミネートを実施。
・ノミネート募集期間:2022年1月20日(木)〜2月24日(木)
・受賞店舗選出方法:255店のノミネート店舗から、タイムアウトの編集部が各部門6店舗を選出。読者投票を実施し、投票数により受賞店舗を決定。
・投票期間:2022年3月9日(水)~3月23日(水)
・総投票数:3,464票
・公式サイト:https://www.timeout.jp/tokyo/ja/things-to-do/time-out-love-loca-awards-tokyo2022
Time Out Love Local Awards 2022 受賞店舗一覧と受賞者コメント
レストラン部門:スパイスカフェ(押上)
押上の住宅街にひっそりと佇む一軒家。入り口から緑に覆われた小道を進むと現れるのが、スパイス料理の名店、スパイスカフェです。古い木造アパートを改装した内装はすべてD.I.Y.。2003年に世界48カ国を旅したというシェフの伊藤一城氏が、「日本ではまだ知られていない、スパイス料理の魅力を発信したい」という思いでオープンし、スパイスの魅力を伝えてきました。
オープン当初はある種の「入りずらさ」から知る人ぞ知る店として、主に近所の知り合いが訪れていたそうです。コロナ禍では、保育所などへカレーを無償でデリバリーするなど、ローカルに密着した活動を行ってきました。
ランチは、季節によって変わる5〜7種類のカレーを用意。カレー1種1,150円、2種1,450円で、副菜4種、ライス、デザート、ドリンクが付きます。ディナーは、完全予約制のおまかせコース(5,000円)のみ。絵画のように美しい一皿とスパイスを存分に堪能したい場合はディナーがおすすめです。
2021年には姉妹店として、日本橋にモダンスリランカ料理店のホッパーズをオープン。2022年夏には、熱海にオーナーの伊藤が監修するレストランが誕生する予定です。
「ローカルと聞いた時は下町(墨田区)のみと思っていたのですが、東京都全域土だということで大変驚きました。投票いただいたお客様に、感謝の気持ちでいっぱいです。レストラン部門1位に恥じないクオリティーを保ちながら、スパイスやカレーは自由で楽しいものということを引き続き発信していきたいと思います」
ー伊藤一城
カフェ部門:ベルク(新宿)
700票近い投票数を集めたのは、JR新宿駅東改札を出てすぐの駅ビル地下街にあるカフェ ベルク。1970年に純喫茶として創業し、1990年に代替わりでビア&カフェになってから30年以上の歴史を持ちます。7〜23時年中無休で営業し、朝からビールやモーニングを楽しむ人でにぎわいます。
コロナ禍で止むを得ず休業した期間は、卸業者が破棄せざるを得なかった食材を活用した商品やメニューを販売するマルシェとして営業を続けていました。
店主のおすすめは、看板メニューの『ジャーマンブランチ』や、自然卵のゆで卵もしくは半熟卵付きの『モーニング』、パンにソーセージを挟んだシンプルな 『ベルクドッグ』。いずれも「素材を生かし、毎日食べても飽きない味を目指している」そうです。ギネスとエーデルピルスを合わせた『リアルハーフ』は、ギネスビールの品質管理最高責任者がベルクのために発案したオリジナルビール。料理と一緒に堪能してほしいです。
「一時期は立ち退き騒動もありましたが、多くのお客様による応援をいただき、危機を免れました。だからこそ、お客様と一緒にベルクというお店を作ってきた感覚はあります。新宿らしさを意識したことはありませんが、どんな人も受け入れるこの街の空気は、ベルクに合っていると思います。わかりづらい場所にありますが、それぞれの目的に合わせて利用ができるお店です。気軽に寄っていただき、今の時代にはなかなかない、このお店の雰囲気を味わってください」
ー井野朋也
バー部門:サウンドバー ハウル(渋谷)
八丁堀で約5年間営業し、2022年2月に道玄坂へ移転したばかりのバー ハウルが、バー部門を受賞しました。オーセンティックでもアンダーグラウンドでもない「ネオクラシック」な雰囲気が、20〜30代を中心に人気を博しています。
このバーが愛される理由は、世界的なサウンドクリエイターのYosi Horikawaがハウルのためだけに設計施工した巨大ハンドメイドスピーカーと、それを十分に楽しむ空間設計。音の反響を制御しつつ、どの席に座っていても聴き心地のいい音になるよう調整されています。毎週火〜土曜の夜から深夜にかけてDJタイムを設け、経験値の高いDJがその場の雰囲気に合わせて選曲しています。
店主おすすめのドリンクは、浅草にあるトーキョーリバーサイド蒸留所の「飲む香水」と言われるクラフトジンを使用したジントニック。香り高いジンの良さを最大限引き出すようローズマリーを加えたジントニックは、リピーターの多いメニューです。ほかにも季節ごとのカクテルやジャパニーズクラフトリキュールを多数そろえているので、音楽に合わせてお気に入りの一杯を探してみてください。
「実は、以前から渋谷に店をオープンしたいと思っていました。八丁堀にあった時以上にコンセプトと音楽性に統一感を持たせており、今後はより音楽の満足度を上げていきたいと考えています」
ー田川泰仁
クラブ部門:青山蜂(青山)
1995年にオープンし、今年で27周年を迎える青山蜂。4階建てのビル一棟が丸々クラブで、それぞれカラーの異なるフロアがあります。東京都内のいわゆる「小箱」のなかでも特にアンダーグラウンド色の強いヴェニューで、ヒップホップからハウス、ドラムンベース、ロックまで、さまざまな音楽ジャンルのイベントが開催されています。
青山蜂ならではの魅力は、2階フロアで国道に面した大きな窓。夕方になると西日が綺麗に差し込み、野外レイヴのような雰囲気になります。また毎週末の始発頃に開催される早朝イベント『ASA-HACHI』では、朝日を浴びながら踊る非日常的な体験を味わえます。開放感溢れる空間が、多くのクラバーたちに愛される場所です。
「東京の中でもいわゆるローカルが濃い場所であり、国内だけではなく世界から見ても珍しいクラブだと思います。かといって閉塞的ではなく、地方から訪れた人からは『地元のクラブっぽい』と言われることも少なくありません。東京はほかの地域に比べ、膨大な数のクラブが集まっています。一晩でさまざまなベニューを回遊する遊び方が根付いているからこそ、蜂を訪れる人の目的は『目当てのDJを観る』『ナイトイベントのウォームアップ』『遊び足りなさを発散する』などバラバラ。東京以外から訪れた人にもそういった遊び方の多様性を体感してほしいです。これからも、あらゆる人々にとっての発着駅のような存在になれればと思います」
ー清水朗樹
ショップ:ヘッシュドウグズ(原宿)
原宿のキャットストリートに店を構えるヘッシュドウグズがオープンしたのは2005年。サンフランシスコでスケーターとして8年間活動していた石井“CB”洋介氏が、『スケーターのためのセレクトショップ』として開いたのが始まりです。
店内の一画にはスケートボードのデッキ(板)がぎっしりと並び、スケートカルチャーに文脈をもつブランドのアパレルや雑貨のほか、アートもたくさん並んでいます。店主曰く「一般的なスケボーの店よりも刺激とクセが強い店」。セレクションの基準は最新トレンドだけではなく、「スケートボードそのものへの愛を感じさせるブランドか否か」が深く関係しているそうです。
壁には、海外スケーターのサインやグラフィティも目立ちます。それは国内だけではなく海外からも多くのプロスケーターが訪れ、グローバルに愛されるスポットであることが分かります。近年はオリンピックの影響もあり、家族連れがデッキを選ぶ姿も増えたそうです。
「みんなの応援で受賞できたのは本当にありがたい。しかもローカルアワードで選ばれたことも嬉しいです。原宿は感度の高い人たちが集まる場所だから、ビジネスとしては世界的にも難易度が高い街です。でもここから自分のセレクトを発信できていることが、仕事のやりがいになっています。今後もスケートカルチャーを発信していきたい。僕自身がサンフランシスコという街の影響を強く受けており、ヘッシュドウグズも街のもつカオスな側面を凝縮した店にしたいと思っています。スケートが好きな人だけではなく、その周辺のスケートカルチャーが好きな人にも楽しんでもらえたら嬉しいですね」
ー石井“CB”洋介
文化施設:小杉湯(高円寺)
高円寺にある、地元住民の憩いの場となっている昔懐かしい老舗銭湯。2020年には、3階建ての新施設小杉湯となりがオープンし、2021年には登録有形文化財に登録されました。これによって、店主の平松佑介氏は「銭湯や建物の文化を次世代に継承したい」という思いがさらに強くなったそうです。
銭湯を訪れる層は子どもから年配者までと幅広いのですが、6割は20〜30代と高円寺ならではの客層。「高円寺の街全体を家ととらえ、地域全体を住まいとして利用する」という感覚で、家のお風呂として銭湯を使う住民が多くいます。
浴場の鮮やかなペンキ絵は、銭湯絵師の丸山清人氏によるもの。男湯と女湯それぞれの壁には、富士五湖の一つである西湖から眺めた富士山が描かれています。
自然素材を使ったミルク風呂や、日替わりの香り湯(ヨモギ、竹酢液、青森ヒバ、カモミール、ユズ、漢方薬草、ラベンダーなど)、湯船の種類は実に豊富。ほかにも、岩盤温泉やジェットバスなどが楽しめます。
「今回のアワードについて番台前に掲示したところ、お客様からの応援があり、その人達の顔が浮かびました。応募してくれた人たちにありがとうと伝えたいです。お客様の暮らしの中にある銭湯。高円寺を家ととらえる感覚や目に見えない価値をコロナ禍でより求められるようになったと感じています。湯上がりの帰り道で気持ちいい感覚、大きくないけど小さな幸せ。『ケの日のハレ』(小杉湯のオリジナルの造語で、ケの日は日常、ハレの日は非日常)のある暮らし、体験をこれからも作っていきたいです」
ー平松佑介