トップツアーは、東日本大震災の直後から被災地支援に力を入れている。支援策の中心となるボランティアツアーでは、これまでに一般、団体合わせて1万1千人を被災地に送客した実績を持つ。このうち、一般ツアーでは、多くを浜松支店(静岡県)が担っている。支援活動紹介に特化したブログも立ち上げるなど、浜松支店の取り組みは、同社の中でも特に目立っている。
浜松支店でボランティアツアーを中心となって手掛けているのは、団体営業マネージャー、藤沼剛さん(43)。祖母の実家が福島県相馬市にあり、同市内の被災状況に衝撃を受け、何かできないかと思いボランティアツアー造成や添乗を続けてきた。その数は8月で30件に達し、社内では比較的多いとされる本社とさいたま支店の各10件を大幅に上回る。
藤沼さんは「私の何倍もの悲しみを持っている人が必死に生きている。『力になりたい』と自然に考えた」と語る一方で、「震災から1年以上が経過し、ボランティアが激減している。作業が増えているのに残念。1人でも多く送り、活動を広げるためツアーを続けていく」と支援継続の必要性を強調。今後も積極的に復興にかかわっていく。
同支店のボランティアツアーは参加者からアンケートを取る。次回のツアー造成に反映させるためだ。「作業に必要なものは出発前にそろえることを周知する」「帰りに日帰り温泉に立ち寄る」など、被災地で活動したボランティアならではの意見が生きたケースだ。
かつてのボランティアツアーには「災害で商売している」という批判もあったが、東日本大震災でのツアーは被災地から歓迎されているという。同社によると、ある自治体の防災担当職員がツアーの参加をきっかけに、市民がボランティアに行く際に補助金を支給する制度を設ける施策にかかわるなど、想定外の効果も表れている。
同社は浜松支店に限らず「ボランティアとして行くことを求める人がいる限り、あまり採算は考えずにツアーを続けたい」(広報)としている。
今後は、これまでのがれき撤去や片づけといった作業中心から、農地復旧といった経済分野、夏祭りの手伝いといった文化分野を支援するツアーを造成していく方針だ。
6月の社員ボランティアによる農地作業