世界にASR会員400万人 日本は世界2位の市場
――アスコットが展開する宿泊ビジネスとは。
「アスコットはサービスレジデンス(サービスアパートメント)として1984年にシンガポールで開業。現在では世界40カ国、220都市で約940軒、16万2千室を展開している。運営施設は、サービスレジデンス、ホテル、シニアリビング、学生向け宿泊施設やレンタルハウスなど多岐にわたる。アスコットは、シンガポールに本社を置く不動産投資運用会社のキャピタランド・インベストメント・リミテッド(CLI)の100%子会社で、アスコットジャパンは2002年に設立された。物件の80%はアジア太平洋地域に集中。物件の80%のオーナーはサードパーティ(第三者)だ」
――オークウッド・ワールドワイドを買収し、事業規模が拡大した。
「アスコットは22年に世界有数のサービスアパートメントプロバイダーであるオークウッド・ワールドワイドを買収。これにより、アスコットのグローバル・ポートフォリオは81施設、1万8千室増加した。特に日本のアスコットポートフォリオは2倍となり、サービスアパートメントとホテルステイの両軸で国内外からの宿泊客を獲得できるようになった」
――日本で現在展開しているブランドは。
「首都圏を中心に5ランド、22施設を展開している。アスコットは『アスコット丸の内東京』、オークウッドプレミアは『オークウッドプレミア東京ミッドタウン』『オークウッドプレミア東京』の2軒で、オークウッドは『オークウッドホテル&アパートメンツ麻布』『オークウッドレジデンス品川』『オークウッドスイーツ横浜』など10軒。他にサマセット2軒、lyf2軒、シタディーン5軒を展開している。22軒のうち9軒は長期滞在専用施設で、残りの13軒はホテルライセンスを持っており、ハイブリッド営業をしている」
――オークウッドはサービスアパートメントの老舗だ。その買収効果は。
「オークウッドは、1962年にロサンゼルスで設立された草分けで、15カ国以上で80以上のブランドを展開している。元々、オークウッドはロングステイに、アスコットはレジャーに強みがあった。ロングステイ専門のオークウッドセールスチームはアスコットの長期滞在を引き継ぎ、もう一つのセールスチームは、コーポレート(企業契約)とレジャーの両方のショートステイビジネスに注力する体制にした。二つの専門セールスチームに分けることで、販売効率が上がり、全体の収益性が向上した」
――日本の重要性は。
「アスコットにとって日本は中国に次ぐ2番目に大きな市場だ。特に中国、タイ、ベトナムからの宿泊・滞在客が多い。60%の客室が長期滞在によって埋められている一方で、全体収入の65%以上はホテルステイとなっている。このハイブリッドビジネスがアスコットの強みだ」
――大都市のサービスレジデンスに外国人ビジネスマンが長期滞在するという使い方はイメージできる。日本人の利用率はどの程度なのか。
「国内旅行者の割合は、日本国内の全施設で平均20%以上、地域によっては70%に達している」
――グローバル宿泊ブランドの強みはロイヤリティプログラムによる顧客の囲い込みだ。アスコットの場合はどうか。
「ASR(ASCOTT STAR REWARDS)を展開している。年間の利用実績によって、『クラシック』『シルバー』『ゴールド』『プラチナ』の4等級を設定。ポイント付与、特別レートの客室料金、アーリーチェックイン、レイトチェックアウトなどさまざまな特典がある。会員はグローバルで約400万人いる」
――チャネル別の予約比率は。
「自社の予約センターとコーポレート企業などから受ける直予約が7割以上。残りがOTAやリアルエージェントからだ。この比率はグローバルでも日本国内でもほぼ同じだ。サービスアパートメントの方は、宿泊業ではなく短期の不動産賃貸契約なので、販売チャネルが異なるし、リロケーション会社経由を除けば、ほとんどがダイレクト予約となっている」
アスコットジャパン 代表取締役社長 クリスチャン・ボーダー氏
Christian Baudat スイス出身。1985年にローザンヌ・ホテル・スクールを卒業後、ヒルトンに入社し、日本、シンガポール、チューリッヒなどでホテルを運営。各地のヒルトンホテルの総支配人などを歴任後、2020年7月にオークウッドのディレクター・オブ・オペレーションズ(日本・韓国)兼オークウッドスイーツ横浜総支配人。22年11月、アスコットジャパンの代表取締役社長に就任し、オークウッドも含めた日本のビジネスを統括。
【聞き手・江口英一】